HAYST法

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本棚4
 
[161]IVEC知識試験テキスト制作委員会:『IT検証技術者認定試験(IVEC) 知識試験 テキスト』,BCN,2009年.

 

坂間洋平さんなど、株式会社エス・キュー・シーの方々が中心となって執筆されて、日本ナレッジ株式会社の人たちが協力して作った本で、IT検証産業協会(IVIA)で実施する、IT検証技術者認定試験(IVEC)のエントリーレベルと、ミドルレベルのIVIA公認テキストです(正誤表はコチラです)。

IVECの資格は、次の表のとおりにレベル分けされています。

 


本書は上記表のレベル1~4を対象としています。

特に良いと思ったのは、エントリーレベルの章です。
異種業界から来る人にとって必要となる知識がまとまって書かれているからです。

「コミュニケーションの手段を計画する」といった大切なことがちゃんと書いてあるのがとても良いと思いました。

 

[162]鈴木昇一:『感性知能情報学入門』,東京図書出版会,2008年.

 

感性、知能といったものを情報として取り扱うための数学の本です。
パターン認識や、連想系認識をどうやって数式化しているかといったことが書かれています。

で、さっぱり分からず撃沈です。
たとえば、第4章のタイトルは「パターン集合Φの表現空間は可分なヒルベルト空間Hの一部である」といった感じ。

けど、そういうことを一生懸命研究されている方がいて初めて世の中が色々と便利になっていくのだなぁということを感じられるので良しとします。ww


 

[163]関 将俊:『dRubyによる分散・Webプログラミング』,オーム社,2005年.

 

分散システムやマルチスレッドプログラミングに興味がある人は、とても勉強になります。

小さな「実験」を通して仕組みを理解させるという書き方がとてもいいと思いました。

 

 

[164]桜井章一:『人を見抜く技術』,講談社,2009年.

 

「伝説の雀鬼」こと桜井章一の人間観察眼が書かれています。

たとえば、人間の本質についてこんなことを書いています。

 会社であろうが、なにかの集団であろうが、人は上に立つと譲らなくなる。逆にいうと、上に立つ人は譲らなくて済むから上に立ちたくなる。
 上に近づけば近づくほど、社会的な地位や名誉、あるいは金銭などいろいろなものが増えてくる。そうなると割り込まれることも必然的に増えてくる。それを極力抑えたいがために、人はさらに上を目指すのだろう。割り込まれても譲らなくて済む高みを目指して。
 しかし、人間はいつも自分のことだけを考えているわけにいかない。とくに上に立つ人間は、まわりの人間のことも考えなければならない。自分の仕事だけやりやすくなってもしょうがないのだ。集団としてやっていくには、まわりの人間の仕事もやりやすくしてやらなければならない。
 そう思えば、そこに譲ってあげる気持ちが出てくる。私は、まわりから見たら譲らなくていい立場の人間かもしれないが、その場を少しでも楽しく、仕事をやりやすくしたいから常に譲る気持ちを持って生きている。
 上に立つ人間にこそ、譲りの精神がなければならないと思う。これは、謙虚さを売れということではない。譲るところは譲ってやる。上に立つ人間は、それをごく自然にできるようにしないといけない。私が人間関係を柔軟かつ良好に保ってきたのは、この〃譲り〃の精神があったからにほかならない。


確かに、私が知っているリーダーたちを思い浮かべると「この法則」結構成り立っているよなぁと思います。すごく優秀ですごく一生懸命でもこれがないと人はついてこないというか、空回りしてそこより上に行けないというかそんな気がします。

# ちなみに、私はリーダーに向いてないしなりたいとも思っていないので観察するだけです。

他にも、

 学問やそのほかのさまざまな専門分野を学ぶうえで、自分より知識のある人、もしくは自分よりその分野に深く関わっている人からものごとを教えてもらうのは当然のことだ。いわゆる〃できる人〃たちからいろいろなことを学ぶ。
 しかし、それが〃人生を学ぶ〃ということになった場合、私はその学ぶ対象に〃できる人〃をけっして選ばない。私が人生を学ぶのは〃できる人〃からではなく、〃できない人〃からだ。「あの人がすごい」「あの人はいろいろなことを知っている」というように、世界には、いろいろな〃できる人〃がいるのだろうが、私はそんな人たちにはいっさい興味がない。生きていくうえで私に多くのことを教えてくれるのは〃できない人〃たちなのだ。
 人は、あるレベルに達すると(達したと思っているのは本人だけだったりするのだが)、そのレベル以下の人からは学ばなくなる。学ぼうとするのはたいてい、「この人は自分より上」と判断した人からばかりだ。たいがいの人が〃能力のある人〃を敬っていくようになってしまう。でも私は、違う。〃できない人〃を見て「なんでできないんだろう?」と考え、そこから学んでいく。


初めに書いた謙虚さの話も、恐らくは〃できない人〃の振る舞いから学んだことなんだろうと思います。反面教師という言葉がありますが、確かに〃できない人〃の振る舞いを観察して「人間って、なんでこうなってしまうんだろう?」と考えることはとても有効なことだと思います。

それから、「私はその学ぶ対象に〃できる人〃をけっして選ばない」と書いてありますが、これは「選ばなくても自然にできる人のことは敬い学ぼうとするので意識する必要が無い」ということかもしれません。

と、このようにハッっとさせる言葉がたくさん詰まっていて面白かったです。
他のも読んでみようかな。


 

[165]多田 和夫:『探索理論』,日科技連出版社,1973年.

 

松尾谷さんが、CFDの講習会でソフトウェアテストの基礎となる学術的根拠の一つとして「探索理論」を上げるので興味を持って読んでみました。

探索理論とは何かというと、目標物を効率よく探し求める方法のことです。第二次世界大戦時に連合国側はドイツのUボート(潜水艦)による攻撃を受けて1,000万トンもの船舶を失いました。

この事態に対応するためUボートの発見を効率よく行う方法が検討されて、この探索理論が発展しました。このときに、考慮しなければならないのは大きくいって「目標物の特性」と「探索者の特性」の2つです。

 

↑これは、どの探索モデルを適用するかを判定するための「探索モデルの分類図」です。

◆ 目標物の特性

目標物の特性として、まず、one-sided(非競争的)かtwo-sided(競争的)かの違いがあります。
たとえば、犯人と警察官のように目標物(犯人)が探索者(警察官)の動静についてある程度の情報を持って、それを利用して発見を回避しようと努めるような場合をtwo--sidedと呼びます。逆にたとえば、金脈探しのように目標物が動かなかったり動いたとしても探索者の情報を使わない場合、one-sidedと呼びます。

その他にも、目標物の特性には、探索空間を連続的に考えるか離散的(飛び飛び)に考えるか、目標物は単数か複数か、出現しっぱなしか出現と消滅を繰り返すか、動かないで止まっているか動くものかなどがあり、それらによって目標物のタイプを分類します。

ソフトウェアのバグの場合は、one-sided、離散的(一部のバグは区画に分けたところだけでは見つからないので連続的)、複数、出現(一部のバグは出現と消滅)、停留ということになるでしょう。

バグの見方がちょっと変わりませんか??


◆ 探索者の特性

探索者の方も、一人で探す(単数)か複数人で探す(複数)かの違いがあります。投入努力の可分性とは、探索時間や探索費用について任意に微量に分割できるか、1回の探知に要する時間、費用などという基本量(quantum)があるかの違いです。
探知情報の信頼性はノイズの有無で、探索過程については一段階だけか多段階に分けるかです。
そして、最適性の基準を考えることといっています。すなわち発見率最大なのか、期待のリスク最小なのか、はたまた別のものなのかと。

ソフトウェアテストの場合は、複数、任意、雑音あり、多段階、期待リスク最小が基本でしょうか。

★★★

本書では、これら、探索モデルの分類をしたうえで、それぞれのモデルに対してどのような探索理論(探索の作戦)があるのかについて書かれています。
そして、結果としてUボートは連合国側の駆逐艦によって効率よく発見され全滅させられました。

細川さんを中心としたファーブルプロジェクト(バグを収集して分類するプロジェクト)が始まりましたが、その分類の一つとしても使えるんじゃないかなと思います。

また、たとえば、網羅的なテストとはどのような目標物(バグ)を効率よく見つけられるのかといったことを論理的に考えるのに役に立つと思いました。

今回、智美塾でテスト対象とテスト目的を分けてテストアーキテクチャを検討することを提案しましたが、探索理論的にも正しい方向だったんだなぁと思いました。


 

[166]Michael A. Cusumano(マイケル・A. クスマノ):『ソフトウエア企業の競争戦略』,ダイヤモンド社,2004年.

 

マイクロソフトの戦略を中心に書かれた本です。

テストについてももちろん書かれています。

 基本的な考え方は、「テストをしすぎることはない」ということだ。これは特に、マス・マーケットを対象にソフトウェア製品をつくっている企業に当てはまる。マイクロソフトでさえ、不満をもつ顧客から毎日数百万もの問い合わせがくることには耐えられない。ビル・ゲイツは、九〇年にウィンドウス3.0が数千万本も売れるようになり、あまりにも多くのユーザーが問い合わせてくるようになって、この問題を認識するようになった。マイクロソフトはもっと売上高が小さかった八〇年代に、不良品のリコールで何百万ドルも費やしたことがあった。ゲイツはまた、ワードパーフェクトのように、社員の半分が電話への解答に費やされるようになってしまうことを恐れるようになった。しかしそうはならなかった。この時点からマイクロソフトは、顧客ごとの苦情を解析し、その情報を毎週開発グループに伝達するためのテスト担当者や製品技術者を雇うだけでなく、開発者によるユーザビリティ・テストに多大な努力を払うようになった。唯一の目的は、信頼性、使い勝手、インストールのしやすさ、その他の製品品質にかかわるさまざまな問題を改善することで、膨大な製品サポートに必要なコストを避けることだった。


ここでは、作るときの手戻コストよりも市場導入後のサポートコストに着目していますね。
作るときの問題については、こんなことを書いています。

 我々は何十年も前に自動車や他の産業で、開発や生産サイクルの最後になってからテストを行って修正するよりも、品質を継続して製品に「組み込む」ほうが結局は安く済むことを日本企業から学んだ。これは、ウォーターフォール型のプロジェクトで特に当てはまる。

-- snip --

 八九年の段階では、マイクロソフトの人々は自分たちの技術によって品質を連続的に組み込んでいると考えていた。品質テストは、ウォーターフォール・プロセスの最後に、技術者にバグを探させて修復させるようなものだ。確かに日本のソフトウェア・ファクトリーではこの方式を実践し、プロジェクト要員のわずか一〇%をテストに割り当てただけで、あの驚異的な品質を達成できたことを認めなければならない。しかし日本では、開発者に対して、自身のテストに多くの時間を割くことと、さらに品質保証スタッフと一緒に設計とコードの検討に参加することを求めていた。同期安定型アプローチでは、設計やコードのレビュー、開発者の相棒であるテスターの利用、デイリー・ビルド、節目ごとに中間目標を置いて安定化を図るといった従来型のベスト・プラクティスを簡単に導入できる。プロジェクトの最後だけでなく全体にわたってバグを探し、修正する機会が与えられる。このアイデアは、プログラマーがペアとなってコードを書き、テスト・ケースを書き続けながら、互いの成果を検討する「エクストリーム・プログラミング」の手法と実に類似している。



 筆者がプロセス調査によって得たデータからも、この点が明確に示された。つまり、プロジェクト・チームが統合化テストを早い時期に徹底して行えば行うほど、品質は向上し、プロジェクトは、予定していたスケジュールと予算内に収まるようになる。


日本人って、自分がやっているプロセスを定義したりましてやそれの良い点を論理的に説明することに躊躇するので善い行いが継続されず次々と乗り換えて失敗しているのかなと思いました。

でも、そうして一周してまたTDDのように開発者が自身のテストに多くの時間を割くことが見直されて流行ってくる。

テストに工数の五〇%を掛けているマイクロソフをすごいと思うか、それは開発者がちゃんとテストしていないからしかたなく五〇%も掛けざるを得ない状況なのか?
結果としてマイクロソフトの市場品質は一〇%しかテストに工数を掛けていない日本のソフトウェアプロダクトと比較してどうなのか?? また、開発スピードや製品のユニークさを比較するとどうなのか???

本当は「開発+テスト」のインプットに対してアウトプットされた機能+非機能の品質を測る必要があるのでしょうね。

おもしろいなぁ。


 

[167]本田 健:『ユダヤ人大富豪の教え』,大和書房,2006年.

 

アメリカに渡った青年が、ふとしたきっかけで、ユダヤ人大富豪と知り合い、「幸せな金持ちになる17の秘訣」を授かるという話です。実話を若干脚色したものだそうです。

ハウツー本としてもすぐれていますし、話としても面白かったです。

現実に、筆者が幸せなお金持ちになっているというのも説得力があるのか、発売後5年たった今もアマゾンランキング593位です。すごいですね。私の買った本は33刷でした。

★★★

さて、どんな教えが書いてあるかというと、たとえばこんなのです。

 私は若い頃、成功者に出会っていくうち、おもしろいことに気がついた。彼らは、とても人を大切にするのだ。私みたいな取るに足らない人間に親身になって相談にのってくれ、自分の人脈の中から最適な人を紹介してくれた。あとのフォローも丁寧で、まるで、自分が彼らにとっていちばん重要な取引先だったかのように感じたものだよ。
 そこまでしてもらったのだから、将来必ず何らかの形で恩返しをしたいと強く思ったものだ。彼らはまったく見返りを期待していなかった。ただ若者を助けてあげたかっただけなんだ。それが、彼らの生き方なのだ。彼らがいちばん大切にしているのは、『信頼される人間になる』ということだと気づいた


そうなんですよね。実は、私が会社に閉じこもってなくて多少なりとも外に出て何かしようと思ったきっかけは、奈良隆正さんでした。

奈良さんがまだ部長でバリバリ仕事をされていたころ(今ももちろん現役ですが)、私の後輩が奈良さんのセミナーに参加して「これはすごい!」と感激して帰ってきたのです。

で、彼が、奈良さんが講義されたとあることについてもっと知りたいというので、「じゃあ、コンタクトを取ってみようか」ということで当時全く面識のなかった奈良さんにメールを出してアポイントを取り、(偉い方にお会いするので私が当時連れて行くことができた部門長の)張替さんを伴って会いに行ったのです。

こちらとしては、ヒントの一つもいただけたら十分と思って行ったのですが、ヒントどころか奈良さんが持っている全てのもののなかで、具体的な製品名がでない情報はなんでもくださいました。
それも、紙じゃなくて電子ファイルの形で。

私が、「こんな貴重な情報をいただいてしまって良いのでしょうか?」と聞くと、奈良さんは「どんどん活用してください」と言いました。
重ねて、「でも、重要なノウハウでしょう??」と聞くと「重要なノウハウだけど、誰でも実践できるわけじゃないから。やってみればわかります。だからノウハウはどんどん提供しても構わないのです」と言いました。

その時は、気前のいい人だなぁと思ったのですが、それに加え、ノウハウを活用するためにはノウハウを知っているだけではだめなんだということと、会社を離れてこんなに親身になって相談に乗ってくれる人が世の中にはいるんだということに吃驚しました。

そして、それから奈良さんの行動に目が離せないようになりました。

★★★

それから、この本では、「すべきことを目標にするのではなく、それができたらどんなにいいだろうとドキドキ・ワクワクするようなことを目標に立てなさい」と教えています。

多くの人が同じことを成功の秘訣として書いていますが、私も同感です。

けど、これが本当に難しい。
2010年度のSQiP研究会のテスト分科会のテーマ選定では、「実現したら本当にうれしいテーマ」を探すためだけに9か月掛かりました。

その結果、確かに、研究レベルとしては低かったかもしれませんが、発表を聞いた人から「そのツール欲しいんだけど」と言われたり、研究員の会社の上司から「ツール開発をうちの会社で引き取ってよいか?」と聞かれました。
だから、目標設定やテーマ選定の時には本当に時間をかけて「実現した姿を想像すると、ドキドキ・ワクワクするか」を考えた方が良いと思います。

Quality Centerがフル活用されている状態はコヤマンをドキドキ・ワクワクさせているようです。

★★★

また、教えを実践していく中で、陥りやすい罠についても警告しています。

「自分が誰かを知っていれば、外部からの声に惑わされないということですね?」


「そのとおり。君は、他人のために良かれと思って行動するタイプだから、その部分が君の足をすくうことになるだろう」


「どういうことですか?」


「一言で言うと、人が良くなろうと思わないのを見て、傷ついてしまうということだよ。ほとんどの人間は人生を良くしたいとは考えていない。君は世界人類に幸せになってもらいたいと思っている。そのギャップに君は耐えられなくて、苦しむだろうと言っているのだよ」
「たしかにそのとおりですね。どうすればいいのですか?」


「ひとは、それぞれベストな人生を送っていると信頼してあげることだよ。それぞれの人にとって、ベストなタイミングというのがあるものだ」


私の周りでも、この罠にはまって苦しんでいる人がいるように思います。

なかなか、言葉だけでは得心しない教えです。私も、10年前ならわからないなぁで終わっていたと思うのですが、今は、多少そうだなと思うようになりました。


 

 

 

[168]岡田 斗司夫:『あなたを天才にするスマートノート』,文藝春秋,2011年.

 

まず、この本の天才の定義がいいです!

 

このうちの2つを兼ね備えている人は人生で成功するそうです。

 

身近な人であてはめてみると、発想力と論理力を兼ね備えた人としては、清水吉男さん。ああしたらいいんじゃないか、こうしたらというアイデアがどんどん湧いていてそれが論理的にもしっかりしているので派生開発という新しいジャンルを開拓できているように思います。

つぎに、表現力と論理力を兼ね備えた人は、兼子毅先生が真っ先に思いつきました。ものすごく論理的に物事を捕えていますし、それを伝える圧倒的なプレゼン能力もあり、とても話が面白いからです。頭がいいなぁといつも思います。しかし、兼子先生のオリジナルの考えというのが今一つ伝わってきません。

発想力と表現力を兼ね備えた人は、板倉稔さん。どんどんアイデアが出て魅力的な表現力で圧倒するのですが、論理的かなというとそうでもなかったりという面もあります。

三つを併せ持った天才はというと、飯塚悦功先生があたるんじゃないでしょうか。

天才の定義部分については、facebookで読めますので興味のある方は
こちらをアクセスください。

★★★

さて、実際のノート術の方ですが、悩みの解消としてよさそうです。筆者は、

 悩みの本質、苦しさの本質というのは、「複数の問題を頭の中でグルグルと回している状態」から生まれる。


と言います。悩みをノートに書きだして忘れる(ノートに覚えておいてもらう)というのは良い方法だと思いました。

また、論理的になるための訓練として、上下水平方向に物事を考える方法が書かれています。

 1. なぜ?:下
    トヨタのなぜなぜ5回のように「なぜ?」と理由を掘り下げる
 2. ということは?:上
    十分に「なぜ?」を考え、論理の土台を作った後に「ということは?」と解決方法の仮説を考える
 3. 時間をさかのぼる:左
    過去に同様の問題が無かったか探す
 4. 類似と連想:右
    一歩下がって似たものを探す
 5. 私はいま、こう考える:
    自分の感情を入れて「私だけ」の論理にする

これは、使える知恵だと思います。それぞれは、直列だけでなく一つの「なぜ?」から複数の理由を見つけるタコ足的なものでもOKとのことです。むしろ常に、それだけで十分かを考えて、タコ足的なものにしていく方が良いのではないかと思いました。

★★★

コンピュータを利用せずに紙のノートを使う理由は簡単に自由に絵や図を描くことができる点をあげています。

増えてきたときに本当に検索が無くて大丈夫かなぁと気になりました。

あと、ダイエットの例が多いのでダイエット本(『
レコーディング・ダイエット決定版』の簡易版)としてもいいかもしれません。

 

[169]諏訪 良武:『たった2つの質問だけ! いちばんシンプルな問題解決の方法』,ダイヤモンド社,2010年.

 

この本の要点は帯(写真2)に書いてある通り2つだけで、問題解決を図るときに聞くタテとヨコの質問だけです。

タテの質問
 その原因を1つあげてください

ヨコの質問
 その原因が解決できると、この問題はすべて解決できますか?


です。

★★★

タテの質問は、「なぜなぜ5回」とほぼ同じです。
違うところは、「1つ」と限定しているところです。「1つ」と限定することで無意識なうちに一番重要な答えを見つけようという気持ちになるそうです。

まずは、「その原因を1つあげてください」という質問で、深く深く問題を掘り下げ(深さは規定しません)、解決策に結びつく答えか、解決しようがない答え(景気が悪いといった自分では解決できない問題)にたどり着いた時点でタテ方向への掘り下げは終わります。

★★★

ヨコの質問は、問題の全体像を炙り出すためのものです。タテの質問で、「1→2→3→4→5(解決可能な問題)」にたどり着いたら、「5が解決できると、4の問題はすべて解決できますか?」と質問することで4の問題を解決するために必要なアクションは5だけで十分かどうかを確認することができます。

不十分なら、「4→6」、「4→7」といった新たなブランチが見つかります。

これを再帰的に繰り返すことによって、次のようなツリーが得られます。

 

数字は、検討している順番です。また、リーフ(最終的なノード)がすべて「解決可能な問題」あるいは「解決不可能な問題」であるところに注意しましょう。

このツリーが問題の全体像になっているというわけです。

★★★

確かに、なぜなぜ5回を行う時にこの方法(特にヨコの質問)を知っていると、より網羅的に問題の深掘りができると思いました。

しかし、岡田 斗司夫の『
あなたを天才にするスマートノート』に書かれた論理的に問題を分析する時の残りの3方向がありません。

したがって、両者を組み合わせて、つまりは、スマートノートの1,2,3,4,5のステップの1の原因を掘り下げて論理の土台を作る過程で使うと良いのではないかと思います。

今度、どこかで使ってみよう!と思いました。


 

[170]齋藤 孝:『最強の人生指南書』,ダイヤモンド社,2010年.

 

西郷隆盛が座右の書とし、幕末維新の志士たちもみなこれに学んだという佐藤一斎の『言志四録(げんししろく)』の解説書です。

少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。
壮にして学べば、則ち老いて衰えず。
老いて学べば、則ち死して朽ちず。(晩・60)


って聞いたことありますよね。

それに対して、

少年の時学んでおけば、壮年になってそれが役に立ち、何事か為すことができる。壮年の時学んでおけば、老年になっても気力の衰えることがない。老年になっても学んでいれば、見識も高くなり、より多く社会に貢献できるから死んでもその名の朽ちることはない。


と、現代語解説を載せ、さらに、齋藤 孝の「それぞれの人生の時期にはそれぞれの学ぶ意義がある」といった解説が載っているといったパターンで紹介してあります。

★★★

うーん。でも、上の例で言えば、本当に佐藤一斎は、「それぞれの人生の時期にはそれぞれの学ぶ意義がある」と言うことを伝えたかったのでしょうか?

私は、単に「学び続けるといいことあるよ」と言っているような気がするのですが。

こんな調子で、微妙に齋藤 孝の解説が解説しすぎているようなところがあるのですが、それも、自分の解釈と比べれば楽しめるのでよしとしましょう。

「心を以て字無きの書を読むべし」(実際の社会から学ぶべき)とか、「学に於て多く疑有り」(学問を進めるにあたって疑問を持つことが大切)とか、「一の字、積の字、甚だ畏る可し」(始めることと、積み上げることが大切)といったとても心に響く言葉が多いので気に入りました。

 

[171]川喜田二郎:『創造と伝統』,祥伝社,1993年.

 

ものすごい、迫力を感じる本です。

川喜田二郎は、1920年生まれですから本書は、73歳の時に出版されたことになります。
(2009年に敗血症により満89歳でお亡くなりになっているので、会おうと思えば会えたのですね。もっと早くに偉大さに気が付いて会いに行けば良かったなぁ)

本書の気迫に圧倒されます。

★★★

圧倒される一方で、すごく共感できる部分もあります。たとえば、次の文。

 人間が自分の知恵や技巧に自信を持ちすぎて、何もかも計画・計算ずくで事を為そうとする、そういうビジョンというものはたいしたことはないので、そういう「計らい」の外に出て行く何かこそ、現代にもっとも大事なことではないかということである。
 現代はあまりにも、その「計らい」のなかだけで文明が進んできた。その果てに、現在のようなぶざまなことになったのではないか、というあてつけも多少は入っている。

  - 中略 -

 実際に人間の創造的行為というものを、ムキになってフィールドワークやKJ法を使って本当に努力したとき、最後には、この雲のように水のように、あるがままに任せるという心境になっていて、自分がやったんだという浅ましい心は抜けているのである。
 また、人知の「計らい」に固執する浅はかさを捨てた角度から物事のなりゆきを見てみると、そこには自然の流れというものがある。じつは、これこそが一人ひとりの人生にとっても大切なものであり、現代文明にとって大事なものであることがわかるのである。


他社に行って、コンサルティング活動をしていると、まぁ、最初はHAYST法のテクニックを教えるわけですが、HAYST法がすごいんじゃなくて、HAYST法をきっかけにソフトウェアテストって何だろうって考えて本気になってテスト設計に取り組むことが大切で、そこまで行くと、それぞれの職場における自然な流れをどう作っていくかという点に(HAYST法道場の参加者の)目が向くようになります。

そのような状態になれば、もう私はその職場にとって不要なものになり、あとは、勝手に伸びていくだけなんですよね。

★★★

この本、ハードカバーで、390ページもある立派な本なのですが、2,650円であり、もう、居酒屋一回分にも満たないお金で手に入れることができます。
是非、読まれることをお勧めします。

そうそう。若い人は、「IV KJ法とその使命」→「V 創造的参画社会へ」→「I 創造性のサイエンス」→「II 文明の鏡を省みる」→「III 西欧近代型文明の行き詰まり」→「結び 没我の文明を目ざせ」といった、IV章から読み始めることをお勧めします。
というのは、最初の方は創造性とか文明といった抽象的で大きな話なので、それはそれで素晴らしいのですがちょっと眠くなってしまうかもしれないからです。


 

[172]海原 徹:『月性』,ミネルヴァ書房,2005年.

 

本書は、月性(げっしょう:1817~1858)という吉田松陰に影響を与えた、幕末期の勤皇僧の足跡を研究したものです。

★★★

月性は、次の漢詩を書いたことで知られています。

男児立志出郷関
学若無成不復還
埋骨何期墳墓地
人間到処有青山


最後の行の、「人間到る処青山有り」(じんかんいたるところせいざんあり)は聞いたことがあると思います。

この詩は、「男児出関の詩」と呼ばれることが多いのですが、正しくは「将東遊題壁(まさにとうゆうせんとしてへきにだいす)」というタイトルで、すべて書き下し分にするとこうなるそうです。

男児志を立てて郷関を出ず、学若(も)し成る無くんば復(ま)た還らず。
骨を埋むる何ぞ期せんや墳墓(ふんぼ)の地、人間到る処青山有り



無名の若者が志を立てて故郷を後にし、身を立てて名を揚げなければ再びこの地を踏ないという決心をするという詩です。 
骨を埋める地をどうして決めなければならないのだろう、世の中にはどこにだって自分の骨を埋めるくらいの青々とした山はあるのだからと、「弱気になるな。くじけるな」と自分の気持ちを奮い立たせているところが良いです。


昔からこの漢詩が好きだったのですが、作者の名前を知ったのはつい先日で、興味をもって読みました。

正直に言って、42歳という若さで亡くなった月性ですから、この漢詩の他に取り立ててすごいエピソードがあるわけではありませんが、逆に言って、この漢詩が奇兵隊をいかに奮い立たせたかと考えると言葉のチカラというものを感じます。

★★★

4月は、学年が上がったり、就職したり、職場が変わったりといろいろ大変ですが「人間到る処青山有り」という気概で乗り切っていきましょう。

 

[173]鎌田 東二編著:『モノ学の冒険』,創元社,2009年.

 

モノと聞くと、物という漢字を思い浮かべて実体のある何かを想像するのですが、物の怪なんていうと、それは霊的存在ですし、者というと人を指します。

 

また、ものづくりというのは、ただ単に「物」の作り方を指しているわけではなく、プロセスや文化をも意味していたりします。

このような、「モノ」の多義性について様々な人がそれぞれの観点から論じている本です。

 

★★★

 

鎌田 東二は、「言葉と心と物と事とワザ」というまとめ方をしていてなるほどなと思いました。
ここだけ抜き出してもよく分からないのではないかとも思うのですが、

 言葉は、モノとこころをつなぐモノであり、同時に、コトであり、ワザである。その、モノとこころをつなぐワザとしての言葉、また、コトとこころをつなぐもの・こととしての言葉に緻密なまなざしと考察をめぐらさなければならない。

と書いています。そして、

 ①霊─霊(魂) 霊性的位相 spiritual phase 儀礼技術としてのワザ
 ②者─心 人性的位相 personal phase 表現技術としてのワザ
 ③物─体 物性・身体的位相 physical phase 生産・生活技術としてのワザ

「ワザ」は「モノ」を通して「こころ」を自己外化し、型化するいとなみである。

と書き、「感覚価値形成のメカニズム」をまとめようと試みています。

 

★★★

 

こんな小難しい話だけでなく、宮崎アニメの考察なんていうのもあって、『となりのトトロ』を例にして、物を操り、(霊的な)モノの世界に観客を引きずり込むテクニックが分析されていたりします。


 すると、どこからともなくドングリが降ってくる。姉妹がドングリを追いかけてボロ家の二階に上がると、そこでマックロクロスケという名のお化け(物の怪)と出会う。ドングリの導きによって、登場人物はモノの側へと引っ張られる。観客も登場人物に感情移入しながら一緒にモノの側に引き込まれてゆく。その後、妹のメイは庭に落ちているドングリを追いかけて、小トトロや中トトロを発見し最後には大楠の根のウロで眠っている大トトロ(トトロ)と出会うのである。

─略─

 傘についても見てみよう。ドングリが姉妹と観客をファンタジーの世界に連れ出す小道具だったのと同じく、傘もまたものが働くシーンで重要な役割を担う小道具になっている。先ほど紹介した雨のバス停のシーンでは、傘はトトロとドングリを交換する媒介となっている。ドンドコ踊りのシーンでは神官が祭礼で使う幣(ぬさ)のように扱われる。さらに、夜の空中散歩では傘が空を飛ぶための道具にもなる。傘もモノの側へ近づく時の神秘的な役割を担わされているのである。

─略─

 さて、そのドングリと傘だが、これらはなんとなく選ばれたわけではない。ドングリと傘の組み合わせには感覚的なレベルでの必然性がある。感覚というのは無秩序なものではなく、感覚のロジックとでも言うべき秩序が働いている。

─略─

<ドングリ>=硬い、小さい、生命力が詰まっている、やがて大きくなる=<サツキとメイ>
<傘>=大きい、丸い、弾力がある、たまにしか使わない、水と親和性がある=<トトロ>

ここでも、物とモノとの感覚のロジックが語られています。

 

★★★

 

このように、モノ学というのは、物と人とのインターフェース(感覚)を考えるうえで重要な手がかりを与えてくれます。

 

つまり、「モノ」という言葉を頼りに、物語(霊的)なモノと、人(者)の心と、実体としての物とを関係づけることで認識論、感覚論、身体論、存在論を総合的に取り扱おうという学問なわけです。

 

これって、実は、ソフトウェアテストにおいても重要なポイントを示しているなぁと思います。
分けて考えるのではなく、総合的にこの3つの位相の軸をとらえていくことが大切なのです。

 

ということで、とてもよいヒントをもらえた本でした。

[174]佐藤 克文:『巨大翼竜は飛べたのか』,平凡社,2011年.

 

著者の佐藤先生は、京都大学大学院農学研究科水産学でウミガメの研究の成果で博士号を取ったそうです。

水産学という学問は、食用にされる海や川の生き物をターゲットにするわけですから、ウミガメというのは異色だったそうです。
けれど、データロガーという小型記録装置を取り付けて、その生き物の速度や加速度などの行動データを解析するバイオロギングサイエンス(動物が記録する科学)がやりたくてウミガメを選んだようです。

その後、東京大学海洋研に所属し、様々な生き物の行動を計測し、その結果を分析したところ、タイトルにあるように巨大翼竜は(少なくとも継続して長時間は)飛べなかったという結論が論理的に導かれたというわけです。

★★★

ちょっと面白かったのが、逆上がりの話。

 例えば、子供の頃に得意だった鉄棒が、大人になると苦手になったりする。子供の頃にはいとも簡単に逆上がりができたのに、小学生にお手本を示そうと思って久しぶりに鉄棒をしたら、逆上がりができなくなっている自分に気がついて愕然とした、そんな経験はないだろうか。これは、胴回りに醜く付着した脂肪層のせいだけではない。

 ─略─

 もしも、子供のときから全く体系が変わらぬまま、身長が2倍になったとしよう。筋力は筋断面積に比例するので、腕の筋肉は子供の頃に比べて、4倍の力を生み出すことができる。しかし、悲しいことに体重は8倍になってしまっている。結果的に、鉄棒する大人の体重を支えるだけの腕の筋力は圧倒的に不足することになる。


なるほどね。ついこの間、アイススケートで異様に足首に力が掛かって「こんなはずでは」と感じたのも足の筋肉の成長が2乗倍なのに比べて体重の増加が3乗倍だったからなのかな。

★★★

さて、ジャンルは違えど、ソフトウェアでもデータロガーの考え方はありますね。
メトリクスというやつです。

昨年のSQiP研究会で、IBMの細川さんや、ソニーの永田さんが率いるレビュー分科会では、『
間接的メトリクスを用いて欠陥予測を行うレビュー方法の提案』というタイトルで、プロジェクトのコンテキストに目を向けた間接的データからどこをレビューすると効率的かというユニークな研究をしていました。

とても、面白い研究で、きちんと相関が検証されるデータがそろえば、この本のように『巨大プロジェクトはリリースできたのか』といったタイトルでまとめられるんじゃないかなぁと思いました。


# 今回の、東日本大震災で、佐藤先生の研究室も
被災されたとのことです。「津波によって、全ての紙資料とHDやCDに保存したデータが無くなった」という一文を読んで涙がでそうになりました。かける言葉もありません。

 

[175]椎橋 章夫:『自動改札のひみつ』,成山堂書店,2005年.

 

書名の通り、自動改札の役割から始まって、歴史、構造、機能、外国の自動改札機との違い等々について書かれています。

まったく新しいシステムで多人数が使用するものなので、事前に使用感のテストを実施しています。たとえば、1970年に国立駅で磁気カードによるフィールド試験を行っています。そのアンケート結果は次の通りです。

・定期券が手許から離れるので不安である
・新しい機械にはどうも抵抗を感ずる
・扉がいつ閉まるか不安に思う
・ブザーが急に鳴り出しそうで嫌だ
・自動改札はまだまだ改良すべき点が多い
・改札はやはり人間に限る


被験者に学生420名を使ったのが忌憚ない意見を収集できたポイントかもしれません。

★★★

外国に行くと、ターンバー形式の改札を良く見るのですが、日本で何故ターンバー形式がないかというと、処理速度の関係だそうです。ターンバー形式は40人/分なのに対して、日本のドア方式は70人/分の処理ができるそうで、ラッシュ時は55人/分位の人が流れるのでドア式しか選べないとか。なるほどです。

★★★

処理速度でもう一つ面白かったのは、判定スピードの克服の話です。
改札をターンバー形式からドア形式に変更することで物理的な速度は対応できたのですが、なんと、切符の内容を判定するプログラムの処理速度が当時のマイクロ・エレクトロニクスの技術ではどうしても、人の歩行速度である1.2m/sより速くできなかったんだそうです。

で、JRはどうしたかというと、な、な、なんと、自動改札機ではサンプリング・チェックを行って、それを補足するために駅員が改札口に立って両方の通路を通る旅客の乗車券を首を左右に振りながら目視でチェックしていたんだそうです。

★★★

その他にもキセル(竹の管の両端に金属製の雁首と吸い口がついていることから、金は入場と出場の近辺だけという符合)と呼ばれる不正乗車についてと自動改札での対応について書かれています。
なんでも、キセルのパターンには50通りもあるそうで、それを入場記録(記録の有り無しや、入場した時刻など)と、出場情報を比べて判定する方法が書いてありました。

全てのキセルパターンには対応できていないそうです。また、不正乗車には機械化(自動判定)だけでは難しいところがあって、人の判定をどう入れるのかという話も参考になりました。
(この本が出版された2005年の頃の話でしょうけれど)

ということで中々面白かったですよ。Suicaの話も載っていますし、何ができていないと複雑になってしまうのかを考えるにも良い教材になると思いました。


[176]佐藤 匡正:『ソフトウェア・デザイン・レビューの実践技法』,ソフトリサーチセンター,1990年.

 

どんな技術ジャンルでも、定番の本があります。
「これ、読んだか?」って言えるやつです。

レビューなら、Tom Gilbの『
ソフトウェアインスペクション』、Karl E.Wiegersの『ピアレビュー』でしょう。

そして、3冊目をあげるなら、体系的でありかつ実践的な本書を推薦したいと思います。

網羅的に説明していることと、日本のレビューについても書かれているからです。

たとえば、理解の水準について、

読める: 作者>>読者
チェックできる: 作者>読者
指導できる: 作者<読者
評価できる: 作者<<読者


と書かれています。当たり前なのですが、上記を意識してレビューアを選定しているかというとそんなことはされていないのが現状かなと思います。

良い本です。

 

[177]三觜 武:『ソフトウェアの品質評価法』,日科技連出版社,1981年.

 

昔、この本の「第12章 バグ発生成長モデル」を読んで信頼度成長曲線を描き収束率を予測するプログラムを書いたことがあります。

式を理解したとかそういうのではなく、数値例があったので、まぁ、それに合ったのでいいかといった今から思えば割といい加減なツールでした。その後、別の人が作ったものに置き換わって私のツールはもう使われていないのですが、懐かしいです。

本書は、そういった意味で具体的な数値例が豊富で、理論の所は難しいのですが、ソフトウエアの品質評価を行うツールを作るのにはとても良い本です。

★★★

理論の所が難しいと書いたのは、たとえば初めの方(p. 16)にでてくる確率代数のところでいうと、

[定義] ブール代数β=<B, ∩, ∪,  ̄, 0, 1>において、βの任意の元a∈Bから実数へのPを考える。
 次の条件が満たされるとき、Pを確率関数といい、BとPとの組<B, P>を確率代数と呼ぶ。
 (1) 1≧P(a)≧0となるP(a)が、一義的に対応する(ここに、1, 0は実数である)。
 (2) P(1)=1, P(0)=0(ここに、P(1)の1はBの最大元、P(0)の0はBの最小元である。これが実数の1, 0 とは文脈的に識別される)。
 (3) 任意のa, b∈Bに対してa∩b=0ならばP(a∪b)=P(a)+P(b)

Bの元を確率事象と呼ぶ。特に1を全事象、0を空事象と呼ぶ、a, b∈Bに対して、a∩b=0となるとき、aとbは互いに排反な確率事象、または略して排反事象と呼ぶ。

 [定理] a∈Bに対して、
  P(~a)=1-P(a)
 (証明) a∪~a=1、a∩~a=0であるから、
  P(a∪~a)=P(a)+P(~a)=1
  P(~a)=1-P(a)


といったような説明が続くのです。なんか難しそうに見えますが、『数学ガール/乱択アルゴリズム』を読んだ人なら、同じ話が載っているので別に難しい話ではないのです。

あぁ、だから、『数学ガール/乱択アルゴリズム』を読んでからこちらを読むといいと思います。

★★★

本書で取り扱っている範囲は結構広く、推移確率行列モデルの話も載っているので統計的テストの基本を勉強することもできますし、冗長性を持たせたシステムの信頼度がどう上がるかといったことの計算も勉強できます。

その辺の計算が必要になったらこの本にあたると良いと思います。

 

[178]結城 浩:『数学ガール/乱択アルゴリズム』,ソフトバンククリエイティブ,2011年.

 

確率、順列、組合せ、O記法、行列と、本当に丁寧に分かりやすく書かれていました。

難度のインフレーションについては、今回はさほどではなかったものの、第8章あたりから手ごわくなって第9章はストーリーを追ってしまい、数式は後回しの状況です(そのうち読み返すかなぁ)。

そうそう。昨日の確率の定義のところですが、数学ガールではこんな風になります(公理1の部分だけ書きますね。後は本を読んでね)。

確率の公理
Ωを集合とし、A, BをΩの部分集合とする。
PrをΩの部分集合から実数への関数とする。
関数Prが以下の公理P1, P2, P3を満たすとしよう。

公理P1 0≦Pr(A)≦1
公理P2 Pr(Ω)=1
公理P3 A∩B={}ならばPr(A∪B)=Pr(A)+Pr(B)

このとき、
 ・ 集合Ωを標本空間と呼び、
 ・ Ωの部分集合を事象と呼び、
 ・ 関数Prを確率分布と呼び、
 ・ 実数Pr(A)をAが起きる確率と呼ぶ。


 「この不等式は何を表現しているかな」とミルカさんが言った。
   0≦Pr(A)≦1
 「ええと、この不等式は≪事象Aの確率は0以上で1以下≫ということですね」とテトラちゃんが答えた。「でも……あの、どうして、関数Prはこの不等式を満たすんでしょうか」
 「テトラ、その質問は無意味だ」とミルカさんが言った。「私たちは≪関数Prはこの不等式を満たす≫といいたいのではない。≪関数Prを確率分布と呼ぶためには、この不等式を満たさなければならない≫といいたいのだ」
 「はあ……」
 「数式を使って≪関数Prはこれを満たさなければならない≫と定める。それはつまり、関数Prに対して制約を課したことになる。そして≪このような関数を確率分布と呼ぶ≫という。これが、公理的定義の常套手段なのだ」
 「……この制約を満たすことが、確率分布の条件ということですか」
 「そう。公理P1が条件の一つ目だ」とミルカさんは頷いた。


こんな形で、コルモゴロフによる確率の公理を説明していっていきます。
素晴らしいなぁ。

 

[179]渡辺 政彦:『拡張階層化状態遷移表設計手法Ver.2.0』,キャッツ,1998年.

 

組込み系ソフトウェアの中には、状態遷移が厄介なものがあります。

たとえば、ビデオの再生、停止、一時停止、早送り、、、といったボタンなどです。
単純な処理に思えますが、ビデオが流れている状態として{通常再生, 早送り再生, 巻き戻し再生}の3つがあったとします(実際はもっとあるわけですが)。

それぞれの状態の時に[一時停止]ボタンを押して画面を一時停止したとします。もう一度、[一時停止ボタン]を押したときに、ビデオが流れている状態に戻るわけですが、早送り再生中なら、早送り再生に戻るべきでしょうか? それとも通常再生??

早送り再生に戻るためには、「早送り再生中に、一時停止ボタンが押された」ことを覚えておかなければなりません。

また、中にはデフォルト状態に戻る必要があるパターン(テープを入れ替えるイベントとか)もあります。色々と条件分岐が複雑で厄介です。

★★★

このような状態遷移を分かりやすく表現する方法が本書で述べている「拡張階層化状態遷移表設計手法」です。そして、それをサポートするCASEツールが
ZIPCというもので、拡張階層化状態遷移表をCのプログラムに変換してくれます。

したがって、ZIPCを使う人はこの表記方法をマスターする必要があります。
そして、使わない人でも状態遷移について考える良い本です。

★★★

テストするには、プッシュダウンオートマトンでモデリングしてから、状態遷移パスを作成することになるのでしょうね。

今度、古川先生に聞いてみようっと。

 

[180]IPA/SEC編:『高信頼化ソフトウェアのための開発手法ガイドブック』,情報処理推進機構,2011年.

 

パブリックコメント版がアップされて、1年、ようやく書籍になりました。

タイトルが「高信頼性」から「高信頼化」に微妙に変わっているのです。その辺が気になる人がいるってことですね。

こちらからPDFで無料で読むこともできますが、273ページで1,000円と格安なので紙の書籍も良いのではと思います。
(私の所にも、10冊送られてきたので1冊、元の部署の部長に送ったら喜んでもらえました)

SODECでは、藤瀬さんが紹介してくださったようです(あ。このウェブでは「化」がぬけてる!)。

みきおさんが勉強会を開くとのことなのでそちらも楽しみです。

 

[181]E.G.レターマン (著), 松永 芳久 (翻訳):『販売は断られた時から始まる』,ダイヤモンド社,1964年.

 

営業研修時に講師から紹介していただき買った本です。私が買った時にはこんなに高くなかったですが、今見たら、7,980円ですね。@_@:

新装版や、『営業は断られた時から始まる』という改訂復刻版がでていますので、こちらを入手すると良いと思います。
(表紙は、私が買った方が素敵ですが……)

さて、内容ですが、さすがに古典的名著と言われるだけあってすばらしいです。

営業でない人も一読の価値ありです。以下、気に入ったフレーズを引用します。

 私は自分の商品のことをすぐに話題にのせて、商談を始めるようなことは絶対にしない。自分の仕事のことは口に出さず、まず見込客のビジネスについて話を進め、その人の仕事を私の仕事として考えることにしている。

 反論とは、もっと詳しい話を聞きたいという正しい要求である。勧誘の初めから終わりまでの間に、こうした要求、すなわち反論を耳にしないで話をまとめようと考えるのは考えるほうが間違いである。

 元来人間は眼に見えない無形のものを所有することによって得られる利益は、とかく見落としがちであるからだ。なおまた、ある人がなにかよいアイデア、あるいは思いつきを持っていたとすると、とかく多くの人々は、そのアイデア、あるいは思いつきは、彼らみずからすでに考えついていたものだと思いたがる傾向があるからだ。
 「どちらの品になさいますか」という質問を行うべきときである。むろん売込む商品、サービスのいかんによって、色彩、値段、型等の点について選択の自由は与えねばならない。「どちらをお求めになりますか」という尋ね方を避けて、「どちらがご希望ですか」という質問を行ない、買うかどうかを尋ねずに、どちらの品に決めるかという話の進め方をほとんど気づかないうちにしなければならない。選択の可能性が非常に多いものの場合には、数種のものに限り、その中から選ばせることがたいせつである。あまり多くのものの中から選択させることは、気持ちを混乱させ、迷わせる結果を引き起こし、「発芽」した買おうとする気持ちを失わせないまでも、ややもすると、決定を後日に延ばしてしまう怖れが多分にあるからである。

七つの販売スローガン

・ 人が訪ねてくるのを待っていないこと。常に自ら率先して、人に近づいていくこと。
・ 人の好奇心をそそるような品を選び、持参すること。
・ 冷たい統計は売らないこと。ものの考え方を売ること。
・ 熱心であること。諸君みずから十分信じきっていることを示さないかぎり、他人は諸君の商品を信用しない。
・ 人のために世話をすること。思いやりの表われである寸志を示すことにとくに心がけること。
・ わずかな手間ですむ頼みごとは頼むこと。それによって、相手の自尊心を築きあげるようにすること。
・ 一度販売した後にも、販売がまとまるまでにつくしたと同じような心づくしを忘れないこと。

この他にもたくさん良い刺激を受けた本です。
また、事例(エピソード)が豊富でそちらもおもしろいです。

 

[182]フレデリック・P・ブルックス Jr:『デザインのためのデザイン』,ピアソン桐原,2010年.

 

薄い黄緑色の『ソフトウェア開発の神話』を書いた、フレデリック・P・ブルックス Jr. が書いた「デザイン」に関するエッセイです。

「要求仕様をはじめに全て決めることは不可能で、膨張していくことは避けられないし、それを契約でどうこうするという試みも上手くいっていない。ここは、未解決のジャンルだから挑戦してね」といった感じで、答えを教えてほしいと思っているところに対しては、課題の提示にとどまっている記述となっていて(仕方のないこととはいえ)残念でした。

ただ、エッセイを通じて思考パターンをなぞることによって何かが得られているような気もします。

 

[183]甘利 俊一:『情報理論』,筑摩書房,2011年.

 

第2章の「雑音のない通信路による情報伝送」の符号化による冗長度の除去あたりまでは、なんとかこの手の本にしては分かりやすく書かれていて読み進められたのですが、第3章以降は興味が続かず、「雑談」のところだけ拾い読みといった感じで敗北感ですー。

まぁ、そんな本があってもいい。

 

 

[184]伊集院 静:『大人の流儀』,講談社,2011年.

 

この本を読み終わった直後、Twitterに、

『大人の流儀』読了。もし、魔法使いが現れて「誰かの人生と交換してあげる」っていわれたら、オバマ大統領でも、ハリウッドスターでも、アラブの大富豪でもなく、伊集院静がいいなと思いました。
posted at 2011年06月08日(水) 07:37:45


ってつぶやきました。

本書は、週刊現代に連載されたエッセイに加筆修正されたものです。
たとえば、こんな文章があります。

旅先でしか見えないものがある

 若い人から、こう問われることがある。
「何もしたいことがないんです。でもこのままではいけないと思うんです。僕は、私は何をしたらいいのでしょうか?」
 その時、私はこう答える。
「旅をしなさい。どこへむかってもいいから旅に出なさい。世界は君や、あなたが思っているほど退屈な所ではない」
 すると何人かの若者が反駁するかのように言う。
「旅をしてなにがあるのですか?」
 私は相手の目を見て言う。
「何があるかは、旅をしてみればわかるでしょう」
「…………」
 若者は黙ってしまう。
 例えば今、テレビ番組はクイズや知識(実はまるっきり知識とは違うが)の答えを求め、それが正解、不正解と断定する。
 納戸の奥にしまってあった家族の品物でさえ骨董品と称して、その値踏みまでもする。金の価値に換算してしまった瞬間に、親や祖先への夢も何もなくなってしまうのではないか。
 世の中は今、すぐに答えを求める。
 正しい答えなどどこにもないと、やがてわかるのに、皆が答えを知りたがる。
 幕末から明治期にかけて、日本人を初めて目にした欧米の外国人が、総じて語っている日本人の印象は、
〃好奇心が強く、人に対して好意的で、よく笑う人々である〃
 というものだ。
 この印象は多分に先進国の人々が途上国の人間を見るときに言われるものであるが、私は日本人の印象としては、そう間違っていないと思う。
 日本人は受動的で、自ら何事かをしようとすることが歴史的にもなかなかできなかった。だからと言って日本人が劣っていたわけでは決してない。むしろ逆で目的意識をいったん持つと、驚くほどの推進力を持つ人々である。ところが今の日本人には目標、進むべき標べが見えない。衆もそうであるが、治めるべき役割の政治家もしかりである。
──何がそうさせたか?
 戦後、大人たちが隣人、他人、国家のことは真剣に考えようとしなかったからだ。
──自分と、自分の家族が良ければそれでよかったのである。
 そんなことはいつまでも続くわけがない。
 若い人の特権に、
──未だどこにも所属せず。
 ということがある。
 青春時代の君たちの目は、すでに私たちが失いつつある視点である。

 昔、旅をしていて足を踏み入れた土地を気に入り、
──ここで残る人生を送れないものか……。
 と思ったことが何度もあった。
 その土地は海外であることが多かったが、そう思った理由が単なる感傷や、甘えではなかった。
 今も、多くの若者、大人たちが世界のどこかを旅している。その数は私たちが想像しているより遥かに多い。
 私はその人たちを敬愛する。
 人間は本来、旅する生き物ではないのか、と言う人もある。私も己自身のことを考えると、そうではないかと思う。
 アフリカの高地で、のちに〃人類〃と称される生き物が誕生し、やがて歩行をはじめ、ユーラシア大陸を超え、ベーリング海峡を渡り、北、南アメリカまで旅をしたことを考えると、人が旅することは本能的なものである、敬愛されるべきものだろう。
──旅は旅することでしか見えないものが大半である。
 これは決して若い人だけへの提案ではなく、大人にも言える。何か機会を見つけて一人で旅発つのもいいのでは。


★★★

この本の最後に、前妻の夏目雅子との出会いから別れが書かれた小編があります。

そこに、映画の言葉が引用されているのですが、それは、
 「あなたはまだ若いから知らないでしょうが、哀しみにも終わりがあるのよ」
というものでした。

愛する人を喪うことがどれほどの哀しみだったかということは、私にはわからないのですが、生きていくことにっよって得られる何かは少しずつ人に降り積もり、耐えがたいと思われた哀しみさえも終わりにする力があるんだなぁと思いました。

 

[185]M.S.Deutsch (著), 島崎 恭一 (翻訳):『ソフトウェアのテスト技術』,企画センター,1984年.

原著は、Prentice-Hall Inc. から1982年に出版された“SOFTWARE VERIFICATION AND VALIDATION”ですから、Myers本が出た数年後に出版されたものです。

以前、紹介した『ソフトウェア品質工学』と同じ人が書いた本です。

『ソフトウェア品質工学』よりは面白いけれど、メインフレームからミニコンに代わる時代の本ですから参考になる話がたくさん詰まっているというわけではありません。

だから、本書の中には、VAXの“シンボリック・デバッガ”の話も載っていてそういったところは興味深く読めました。ちょっと引用すると、
デバッガは、次のサービスを提供している。

・プログラムの実行を止めたりプログラムの状態を調査したりするブレークポイント(breakpoint)の設定。
・デバッガはトレースポイントの通過を示すメッセージを表示するが、そのトレースポイントの設定。
・ロケーションが変更されるたびに活性化される特殊なプログラム・シンボルの監視、ロケーションの新旧の値は変更されるたびに表示される。
・実行が中断した時に変数の内容を調べたり変更したりできる。
・中断ポイントでユーザが指示した式の値を求めることができる。
・プログラム実行の開始と中断。

つまり、オンライン・デバッグができて便利になったねという時代です。

YourdonやConstantineによる結合テストに対する指摘も載っていて、
段階的アプローチの概略は、(ちょっとひやかし半分な言い方だが)次の通りである。
①モジュールごとに設計し、コーディングし、そしてモジュール単位でテストをせよ(普通、“単体テスト”として知られる)。
②すべてのモジュールを大きなバッグの中へ入れよ。
③そのバッグをきつく振れ(普通システム統合とテストとして知られる)。
④そして、すべてがうまく動くように願って指をからませるおまじないをすることだ(普通、“現場テスト”として知られる)。

この方法の主な欠点は、前の例にあるように同時に4つのコンポーネントを結合するために誤りやエラーがどのコンポーネントで発生したのか、見極めるのが困難なことである。


で、このあと、逐次追加統合方式、そしてトップダウンとボトムアップの話に移っています。

 

 

[186]Atul Gawande (著), 吉田 竜 (翻訳):『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』,晋遊舎,2011年.

 


 

米誌「TIME」で2010年の「世界で最も影響力ある100人」に選出された、
医師でありジャーナリストでもある著者、アトゥール・ガワンデ(Atul Gawande)が提言する
全米ベストセラーとなった「チェックリスト」作成のススメ。


というPOPに惹かれて読みました。

チェックリストとは、、、いや、ご存じのものですよ。

  ☑はっきりとした目的が簡潔に定義されている

といったものです。
ちなみに上のは、本書の付録に付いていた「チェックリスト作成のためのチェックリスト」の1番目です。

筆者は、チェックリストには、以下の2つの目的があると述べています。

 ・ 単純な手順の間違いを防ぐ
 ・ コミュニケーションを促進する

そして、それが、建築業界、医療現場をはじめ、あらゆる場面で有効だろうと多くの例で示しています。

★★★

ヴァン・ヘイレンのボーカルを務めるデイビッド・リー・ロスは、コンサートの契約書に「楽屋にボウルいっぱいのM&M'sチョコレートを用意すること。ただし、茶色のM&M'sはすべて取り除いておくこと」という事項を必ず含めます。

これは、有名人の我儘ではなく、もし、茶色のM&M'sが残っていたら他の仕事もいい加減なのではと疑って、すべてを点検しなおすためだそうです。
実際に、これで、興行主が重量制限を無視してセットを組んでいた問題(このままコンサートを行っていたら大事故になっていた!)を発見したそうです。

そう。デイビッド・リー・ロスもチェックリストを使っていたというわけなのです。

★★★

コミュニケーションについては、こんなことも書いています。

(手術前に)まず、一分でもいいから全員が必ず話し合うこと。これはコミュニケーションのチェックであると同時に、チームワークを高めるための方策でもあった。次に、スタッフはお互いの名前を知っておくこと。例えば、ジョンズ・ホプキンスのチェックリストには、手術を開始する前にスタッフがお互いに名前と羽役割を紹介しあうこと、という項目があった。



この本を読んで知ったのですが、大きな病院では手術のチームメンバーは毎回のように替わってしまうのだそうです。

いずれにしても、名前を知って、名前で声を掛けるというのは非常に重要なことです。それは、4月から営業としてお客様先へ行って強く感じています。

# でも、顔と名前が一致しないんだよなぁ(覚えるのが苦手です)。

★★★

それから、今回、一番「そうか!」と思ったのは、以下の指摘でした。

重要な手順が飛ばされないようにしつつ、より柔軟に行動できるように、「読むのち行動」ではなく、「行動のち確認」タイプのチェックリストにした。


これ、すごく重要で効果も大だと思います。

ということで、「チェックリスト? 知ってるよ!」と言わず、ぜひ読んでみてください。
新たな発見がきっとあると思います。

 

 

[187]Philip B. Crosby:『QM革命』,日本能率協会,1984年.

 

Crosby は、1926年6月18日に生まれ、2001年8月18日に亡くなっています。
けれど、未だに品質マネジメントの達人としてCrosby を超えた人はいないかもしれません。

品質は、「要求条件との適合」と定義するべきです。



という言葉は有名ですが、要するに、品質とは、「なんとなく良いもの」といった曖昧さを残す概念ではなく、「要求条件との適合」として具体的に定義してその達成を管理できるものであるというのがCrosby の主張です。
もちろん、具体的にするためには「要求条件」に真剣に取り組み明らかにする必要があるのですが、この意識改革が最重要という主張にはなるほどと思いました。

本書では、そんなCrosby の品質についての考え方が、おはなし風に気軽に読めるものとなっています。ただし、Crosby は経営者に向けてこの本を書いたと思うので、実務者としてはすぐに自分が取り組めることが少なく、また、「それだけではないんじゃないかな?」と疑問に思う部分もあります。

とはいえ、Crosby の思想を理解することは、「品質」を理解することにつながると思いますので、お勧めです。

★★★

ところで、最近知ったのですが、CMMは、Philip B. Crosbyの著書 Quality is Free (邦訳:『クオリティ・マネジメント』)の "Quality Management Maturity Grid" が原型だそうです。
(Crosby の「クォリティ・マネジメントの発展段階」は、たとえば、こちらの論文に引用されています)

やっぱりこっち読まないとダメかなぁ。

 

[188]情報サービス産業協会REBOK企画WG:『要求工学知識体系』,近代科学社,2011年.

 

JISAのREBOK(アールイーボック)企画WGの、

  青山 幹雄  南山大学
  斎藤 忍   株式会社NTTデータ
  中谷 多哉子 筑波大学
  鈴木 三紀夫 TIS株式会社
  中崎 博明  富士通エフ・アイ・ビー株式会社
  藤田 和明  株式会社日立ソリューションズ
  鈴木 律郎  一般社団法人情報サービス産業協会

といった、方々が執筆・編集された本です。

日本のソフトウェア産業は、企画が弱いとか、要求をしっかり捕まえる前に開発を始めてしまうといったことが長い間、言われてきました。

本書は、要求工学(すなわち、ビジネスや製品の企画から情報システム開発、ソフトウェア開発に至る要求を組織的、かつ、合理的に定義するための技術)について、体系的にまとめられた世界初のBOKです。

上記メンバーが3年以上の歳月をかけて議論し、整理したものなのでとても勉強になりました。
(章ごとの整合性を取ったり、リンクで済ませた方が良さそうなところもあり、若干読みにくい……といいますか、頭がぼーっとして働かなくなってしまう……ところもありましたが全体としてはとても良い本です)

★★★

本書では、要求工学が取り扱う知識領域を次の4つに分けて説明してます。

 (1) 要求獲得
 (2) 要求分析
 (3) 要求仕様化
 (4) 要求の検証・妥当性確認・評価

これまでは、漠然と「要件定義」として認識していたものがより行動に結びつく概念としてスッキリしました。

ということで、ソフトウェア関係者はぜひ読んでみてください。おすすめです!

 

 

[189]西村 行功:『システム・シンキング入門』,日本経済新聞社,2004年.

 

システムを構成する要素間に、複雑な因果関係が存在した場合、その構造をロジックツリーであらわすことができません。

そんなときに、因果ループ図(Causal Loop Diagrams)というものを使って表現するのですが、世界の成り立ちをモデリングして、現状を変えるためのヒントを得るために使います。
※ 因果ループ図については、こちらのページなどを見てください。

本書は、上記、因果ループ図を中心にシステム・シンキングについて解説しています。

★★★

因果ループ図には、いくつかのパターンが存在し、恐らく、それらを変形して組み合わせることで、


こんな図を描くのだと思いますが、自分が複雑な問題を解くときに使うというよりは、他人に説明する図として使うと便利なのかなと思いました。

 

 

[190]きしら まゆこ:『緑色のカエル茶色のカエル』,致知出版社,2010年.

 

『チーズはどこへ消えた?』系の本です。

わずか5分で読めますが、色々と考えさせられるので集合教育などで教材として使えると思います。

私は、結構気に入りました。

 

 

[191]古郡 廷治:『文章添削トレーニング』,筑摩書房,1999年.

 

八つの原則で豊富な添削例を示しながら基本的な文章の書き方を教えてくれる本です。

8つの原則とは、

  1. 完全な文を書く
  2. 短い文を書く
  3. 肯定・能動の文を書く
  4. 結束力のある文を書く
  5. 主題のある段落を書く
  6. 論理性のある文章を書く
  7. 的確な語句を使って書く
  8. 日本語の文章は日本語で書く

です。

それぞれは、わかりやすく書いているのですが、ポイントがあまり頭に残りません。
ま、本には相性がありますからね。

 

 

[192]布川 薫、大島 正善、榊原 彰、大久保 隆:『SEの基礎知識 アプリケーション開発技術』,リックテレコム,1997年.

 

SQiP研究会の合宿の帰りに、三紀夫さんに「榊原さんがまだ無名で若かりし頃の本がある」と聞き、買った本です。

内容は、IBMの人たちがまとめたSEの基礎知識で、要求から品質管理まで広く浅く(基礎知識なので)扱っています。テストも少しだけ紹介されていて原因結果グラフも載っていました。

W字型モデルも載っていて、



でした。1997年の本なので、三紀夫さんの言うように、90年代後半には色々なWモデルがあったのかもしれませんね。

概要をざっと理解するのには良い本だと思います。
勉強するには、最近の別の本を読むほうが良いでしょう。

 

 

[193]Alan M. Davis (著), 松原 友夫 (翻訳):『ソフトウェア開発201の鉄則』,日経BP社,1996年.

 

Alan M. Davis (著), 松原 友夫 (翻訳) のです。日経BP社。発売日は、1996/3/25です。

ソフトウェア工学の多数の論文のなかから、principleと呼べるものをDavisが厳選し、実務者にも読みやすく(Davisはもともとは実務者でした)エッセイ風にまとめたものです。

この本には「当たり前」と思うことばかり書いてあります。
けれど、実践できていないことも多いはず。

何故、実践できていないか? どうしたらよいか? を考えるきっかけになる良書です。

テスティングの原理も載っています。
 107 テスト項目と要求項目と関係づけよ
 108 テストを行う時期よりずっと前にテストを計画せよ
 109 自分のソフトウェアを自分でテストするな
 110 自分のソフトウェアのテスト計画を自分で作成するな
 111 テスティングは欠陥の存在をあらわにするだけだ
 112 エラーだらけのソフトウェアは価値がないことを保証するが、エラーがないこととそのソフトウェアの価値は無関係である
 113 エラーを見つけてこそテストがうまくいったといえる
 114 半分のエラーは15%のモジュールで発見される
 115 ブラックボックス及びホワイトボックス両方のテスティングを用いよ
 116 テストケースには期待される結果を含めよ
 117 無効な入力をテストせよ
 118 常にカフカ状態のテストをせよ
 119 ビッグバン説は当てはまらない
 120 MCabeの複雑性尺度を使え
 121 効果的な完了尺度を使え
 122 テスト・カバレッジを効果的に達成せよ
 123 単体テスティングが済む前に統合するな
 124 ソフトウェアに仕掛けを組み込め
 125 エラーの原因を分析せよ
 126 エラーを個人のものにするな

それから、「“硬派”のホームページ」に清水吉男さんによる解説がまとめられていますので合わせて読むと面白いと思います。
 
 
[194]草葉 恋代:『私は♀プログラマ』,ビレッジセンター出版局,1992年.
 
発売当時、私は本屋さんでこの本を手に取って買おうか買うまいかさんざ迷ったうえ買わなかった記憶があります。なんか、立ち読みした時に違和感があったのです。

ビレッジセンター出版局の本は割と好きで、『プログラマの妻たち』や中村 正三郎(懐かしいね)の本とか、「噂の眞相」の裏表紙にVzエディタの広告を出していたところも好感度アップでした。ミカンせいじんスクリーンセーバーも持っていたなぁ。

で、なぜ、今買ったかというと、小川清さんのツイート
その後、女性と結婚していますのでれっきとした男性です。
なぜ、こういう本を書くにいたったかの経緯は本人から書いてもらうのがよいと思うので省略します。

と流れてきたからでした。

えぇっ。男性だったのー、あの時に感じた違和感はこれかって(笑)。

本自体は、当時の世相を良く切り取っていて面白いですよ。

ちなみに、haveさんのホームページは、こちらのようです。
 
 
[195]Robert M. Pirsig (原著), 五十嵐 美克 (翻訳):『禅とオートバイ修理技術〈上〉』,早川書房,2008年.
 
"Zen and the art of ……"の発祥の本です。

ものすごく頭の良い人がいるのだと、ただ、ただ圧倒されながら読んでいます。
感想は下巻を読んだ後に。
(といっても上巻を読むのに半年かかっているからなぁ……)
 
[196]Jono Bacon (著), 渋川 よしき (翻訳):『アート・オブ・コミュニティ』,オライリージャパン,2011年.
 
本書は、Ubuntuのコミュニティ・マネージャーがコミュニティにまつわるありとあらゆることを形式知化しようと試みた本です。

第1章に「信用貯金」(Social capital)という言葉が出てきます。これは、コミュニティのメンバーが他の人に対して、プラスとなるような行動をしたときに、その人に増えていくものだそうです。

そして、コミュニティはこの信用貯金を交換する場だというのですね。

なるほど。これからの世の中は、貨幣よりも信用貯金の方が大切になると思いました。
 
[197]立花 隆・佐藤 優:『ぼくらの頭脳の鍛え方』,文藝春秋,2009年.
 
蔵書数、7万冊と1万5千冊の両氏がセレクトした400冊を対談形式で紹介している本です。

読んでいるだけでなく、内容を専門用語を含めてしっかり覚えているというのがすごいなぁと圧倒されながら読みました。

気になった本は、柴山 全慶の『無門関講話』ですが、ちょっと難しそうなので無門関の入門書を読んでみようかなと思いました。

★★★

公理が必要とする佐藤と、そう考えてしまうと公理が存在することが前提とされて思考が閉じ込められてしまうことを危惧し「確実と思われる体験事実を積み上げていくことで世界認識を深めるべき」とする立花とのディスカッション(224~227ページ)が面白かったです。

上記に関して、ヴィーコの『新しい学』を読まなきゃなと、、、こんな感じに読まなきゃリストが増えてしまった本なのでしたー。
 
 
[198]吉田 戦車:『逃避めし』,イースト・プレス,2011年.
 
ほぼ日刊イトイ新聞で連載されていたものです。
 
連載内容は、こちらから、書き下ろしの「めしまんが」4ページ以外は全て読むことができます。
というより、ウェブの方からセレクトしたものです。
 
ただ、Amazonのレビューアの方も書いていらっしゃいましたが、出来上がった料理が主体だったものから、エッセイが主役になったことでぐっと面白くなっています。

★★★

「逃避めし」というのは、仕事を逃避して自分だけのために作るまかない食のことです。
 
だから、まぁ、リンク先を見ていただければ分かるのですが、こんな風にしたら美味しいかもと思ったアイデアを試して「よし。うまい」と喜ぶものです。
 
逃避めしにもでてくるのですが、池波正太郎の
出汁に酒と醤油を入れ、弱火にかける。
すぐふつふつと煮たってきた。
興奮しつつ具を入れる。
「彦さん、雪が降ってきたようだね」

の世界です
あー、私は、藤枝梅安に出てくる食事シーンが大好きです。

★★★

乾燥野菜ミックスを買っておいて、うどん(乾麺)をゆでるときに一緒に入れて食べる。あぁ、なんて美味しそうなんだろうと思うわけですよ。冬になったらぜひ試してみたい一品です。
 
あと、ピーマンを味噌汁に入れるのも試してみたいなぁ。
 
 
[199]Donald C. Gause (著), Gerald M. Weinberg (著), ヤナ川 志津子 (訳), 黒田 純一郎 (監訳):『要求仕様の探検学』,共立出版,1993年.
 
設計に先立ち、Requirements をきちんと決めることが、いかに品質の作り込みに貢献するのかが分かる本です。
地図と実際の土地とが一致しないときは、つねに、実際の土地を信じよ

といった名言もたくさんのっているし、考えさせる事例(保証印ゴキブリ退治キットや、エレベータに対する要求)も良いです。

本書では、願望リストを属性と属性項目に区別することの大切さを書いています。
属性とは、エレベータでいえば“寿命”とか“色彩”といった関心を持っている次元の事で、属性項目とは“耐用年数より長く”とか“茶色、黒、赤、白”といった属性の細目の事です。

あらゆる属性が明らかにされたら、今度はそれらを機能に結び付けて分類したのち制約を定義してそれが満たされるかどうかつまりは、製品が受け入れられるかどうかをテストすると書いてあります。

ということは、このフェーズで属性(属性項目リスト)、と制約条件を使ってHAYST法で組合せ表を作って思考レビューをしてやったらいいんじゃないかと思いました。

きっと誰かがやって論文になっていると思うけど。
 
 
[200]秋月龍珉:『無門関を読む』,講談社,2002年.
 
この本は、『無門関』という禅の公案集(中国南宋の僧・無門慧開がまとめたもの)の解説書です。

公案とは、たとえば、
白隠和尚は言った、「両方の掌を打つと音声(おと)がする。隻手(かたて)にどんな音声があるか」。

といったやつです(こちらは、『無門関』ではなく『白隠禅師創始の公案』の載っているものです)。

そういった、『無門関』の公案が易しい順番にまとめられています。

解説と言っても答えそのものが載っているわけではなく、答えを導く道を示す感じです。
だいたい、公案に決まった答えがあるわけではないでしょう。

★★★

だから、読み終わってもわかったようなわからないようなという本なのですが、禅が過去や未来の事ではなく、今、現在、ここを自由に生きることだけに焦点を当てているんだなということだけは分かりました(「即今・此処・自己」だけに生きるというそうです)。

つまり、私たちは、今現在、一瞬、一瞬、何かを知覚し、経験しています。
経験、つまり、知覚する時には自分が何かを選択しているわけです。

ここで、選択しているのは自分であり、誰かに強制されずに自由に選択している、、、それを自覚して大切にしようということかなと思いました。
 
 
[201]内田 樹:『最終講義』,技術評論社,2011年.
 
名前の樹は、「いつき」と読むとばかり思っていたら「たつき」でした。樹なつみ(漫画家さん)がいるから。

と、それはともかく、本書は、内田先生の最終講義から順番に時を遡りながら、講義・講演が収録されています。

松尾谷さんから教えてもらったブリコラージュの話が出てきました。
 医療の現場は待ったなしです。「最高最適の医療をこれからご用意しますからちょっと待ってください」と言っているうちに患者が死んでしまうことだってある。今そこにある疾病という現実に対して、手持ちの材料で、手持ちの人員、手持ちの情報、手持ちの時間で対処しなければならない。
 これをレヴィ=ストロースは「ブリコラージュ」と呼びました。「ありものの使いまわしで急場をしのぐ」ことです。医療とはその意味ではブリコラージュそのものです。だから、焼酎で傷口を消毒し、ホッチキスで傷口を縫合し、ガムテープと棒で副え木を作るというようなことは朝飯前なわけです。手許にある資源は全部使うことをつねに訓練されている。目の前にあるものの潜在可能性をつねに考量している。「これは何に使えるんだろう?」ということをいつも考えている。

待ったなしで、必死になって手持ちの駒で工夫しながら対処していくのはソフトウェア開発やソフトウェアテストでも同じですね。

ブリコラージュについては、ゆもつよさんがツイートしていた
仕事は本来ブリコラージュなんだ。けど、仕事の内容は体系的に残さないと伝えるのが困難になる。そこにエンジニアリングが必要なんだ。やり方を規定するのではなくやり方の共有方法の規定だと。 だから、書いてある事、聞いた事をそのままやってもうまくいかないわけだ。
だけど自分がやってる事を言語化するには本読んで頭を整理したり上手く言えなかった事を識別出来るようにならないといけない。

もとても大切なので再掲しておきます。

★★★

こんなことも書いてあります。
教育というのは子供を「葛藤のプロセス」にたたき込むことに尽きるんです。「単一の価値観や単一の言葉遣いにしがみついていたのでは、自分の経験を説明することができない」という、その葛藤の中に巻き込むことなんです。
  -- snip --
子どもというのは「こうすればよろしい」という単一のガイドラインによって導かれて成長するのではなく、「この人はこう言い、この人はこう言う。さて、どちらに従えばよいのだろう」という永遠の葛藤に導かれて成長するのです。

そうですよね。様々な矛盾する意見がある中で、考えて成長していく。うん。そのとおりだ。

このように、内田樹はとても説明が上手いです。
比喩が適切で、すっっと分かった気にさせてくれます。

面白かったので、別の本も読んでみようかなぁ。今度は講義録でないタイプの物を。
 
 
[202]石井 康雄:『ソフトウェア工学入門』,日科技連出版社,1989年.
 
著者略歴によると、石井氏は、1954年に富士通に入社し、FACOM 138、FACOM222の主任設計者を務めたとのことです。

どんなマシンかというと、FACOM 138がリレー式で1960年に開発されたもの。
FACOM 222がトランジスタ製で1961年に開発されたものだそうです。

FACOMはその後、1968年に第一銀行(現在のみずほ銀行)にオンライン預金システムに採用され、今へと至るわけですがその礎を築いた人の一人なんじゃないかなと想像します。

★★★

本書は、ソフトウェア工学の基礎を要求分析から、検査まで概説したものです。各章には適切な問題がついていて理解を助けます。

出版は少々古いですが、考えの整理にはとても良い本だと思います。たとえば、
4.1 設計のレベル

 与えられた仕様の繁簡難易のレベルに応じて、設計にも色々のレベルがある。5つのレベルに分けてみれば、次のようになる。
 (1) 簡単な仕様
 (2) 確立した技術を用いる問題
 (3) 面倒な問題
 (4) 難解な問題
 (5) 複雑な問題

それぞれ違いがわかりますか??

簡単な問題とは、文字数を数えるプログラムのような仕様を見たら設計をしなくてもいきなりプログラミングできるような問題で、確立した技術を用いる問題とは、アルゴリズムを知っていたらなんてことない問題の事。

面倒な問題とは、場合仕分けが多種でからみあっており、整理しにくいような問題。たとえばHendersonの「電報解析問題」など。

難解な問題とは、四色問題を解くなどアルゴリズムのひらめきが必要な問題。

複雑な問題とは、大規模ビジネスシステムのような、面倒な問題がさらに複雑に関係している問題の事。

こう考えると、テスト技術は、面倒な問題と複雑な問題を一緒になって解いていく技術かなと思いました。

テストについても多少触れられています(原因結果グラフと、実験計画法について、極基本的なことが書かれています)。

最後に今後の展望という章があって、今日振り返ってみると面白いことが書いてあるのですが、木村泉先生の次の言葉が印象的でした。
プログラミングとか、システム設計とか、システム分析とかをやっているとき、人の頭の中はどうなっているか、どうやってアイディアをまとめていって、どうやってそれを、どこかに飛んでいってしまわないようにまとめるか、そういう部分をもっとちゃんと調べる必要がある。

「情報処理」Vol. 28, No. 7, p.925, 情報処理学会, 1987


興味を持った方は、CiNiiから読めますので一読をお勧めします。
(パネリスト: 落水浩一郎、菅野文友、木村泉、紫合治、竹内郁雄  司会:鳥居宏治という豪華なメンバーです!)
 
 
[203]Dave Gray, Sunni Brown, James Macanufo, 野村 恭彦(監訳), 武舎 広幸(訳), 武舎 るみ(訳):『ゲームストーミング』,オライリージャパン,2011年.
 
ナレッジワーカーは頭を使うのが仕事です。
そのときに、一人ではなくチームで頭を使う仕掛けが重要です。

チームで頭を使って何かを解決するためには、ただ単に集まってお喋りをしていれば何とかなるわけではありません。

ちょっとしたルールに沿って意見を出し合ったり、図化したりすることで協働作業はずっとはかどり、そこに創造的空間が生まれるのです。

本書では、そのちょっとしたルールのことを「ゲーム」と呼んでいます。
ゲームなので、開幕、探索、閉幕を強く意識します。第1章に書いてあるこの話は本書の中で最も気に入ったところなのですが、ありがたいことにネットで公開されています。

そして、本書では80以上のゲームが紹介されているのですが、どんなゲームかはこちらをご覧ください。また、原著者のウェブサイトには、どんどん新しいゲームが公開されています。写真やイラストを眺めるだけでも楽しいですよ。


そうそう、ゲームの紹介の中には既存のゲームの落とし穴が書かれているものもあります。たとえば、Buttonというゲームの目的にはこんなことが書いてあります。
 ブレインストーミングやグループ作業では、よく「ひとりずつ順に意見を言っていただいて、ぐるりとひと巡りしましょう」というやり方をしますが、このやり方には重要なルールがあります。「誰かが2度目に話すのは全員が1度話してしまってから」というルールです。
 しかしこのやり方には問題がふたつあります。ひとつは、「総当たり制」でひとりずつ順番に話していくというのは、少人数でもエネルギーを消耗する作業だという点。番が回ってくる順序が予測できるため気がゆるみがちで、最後のほうの発言者はきちんと聞いてもらえないことが多いのです。第2の(そして第1の問題よりもゲームの効果を損なう恐れが大きい)問題は「参加者は自分の番が近づくと考えをまとめようとするため、ほかの参加者の話を注意して聞かなくなる」という点です。
 「ボタン」は、このような問題を回避しつつ、「誰かが2度目に話すのは全員が1度話してしまってから」という大原則を守ることもできるシンプルなゲームです。

言われてみれば、その通りなのですが、案外やってしまっていますよね。

ということで、最近どこに行ってもイチオシしている本です。

そうそう、監訳者の野村さんは、『サラサラの組織』、『裏方ほどおいしい仕事はない!』の著者です。
最近は、ソフトウェア関係のイベントでもお見かけしますね!
 
 
[204]橋本治・内田樹:『橋本治と内田樹』,筑摩書房,2011年.
 
大好きな橋本治と、最近興味を持った内田樹の対談集ということで読んでみました。

橋本治が自信を持ってあちこち話題が飛ぶのを、内田樹が常識でつなぎとめようという感じの対談でした。

たとえば、橋本治は桃尻娘を書くときに、
俺が知っている十二年分、彼女が知らないんだな。そういう引き算をしちゃったんです。

と、主人公のキャラクターのパーソナリティの作り方を明かすと、内田樹が、
先生は誰でもそういうことができると思ってるんでしょ。引き算が。あえてしないんじゃないんです。「できない」んですよ。引き算なんて。

と応じてみせる。うん。全般そんな感じのやり取りが続く本です。

★★★

また、内田樹が自身のブログの敷居が高いと言われたけど、敷居の下げ方が分からないとこぼすと、インターネットをしていない橋本治が、
簡単ですよ。書き手の個性をもろ出しにしてしまえば、敷居は低くなるんですよ。テヘッとか、入れるとか。

  (snip)

普通に書くということが、偉そうであるということに、もうなってしまったんですよね。

この回答が内田樹の役に立ったかどうかは分からないけど。ww

★★★

あと、これは大切だって思って思わずツイートしてしまったのだけれど、
内田 壊すのは簡単なんですよ。物を壊すのって。作るのは壊す百倍くらい手間がかかるから。
橋本 でも何かを作ると、ちゃんと壊れるんですよ。最大の破壊は建設なりと思っていますから。
内田 すごい、これは名言! そうか、そういうことを考えるんだ。
橋本 だって新しいものがあって、古いものあったら、もういらないな、となって、古いものって完全に捨てるじゃないですか。中途半端な捨て方は、捨ててないんですよ。破壊なんかされると、破壊しちゃったけれど、ちょっと惜しかったんじゃない? といわれますから。
内田 ほんとうにそうですね。批判なんか、あまりしても意味がないんですよね。批判するくらいなら、批判されているものよりもいいものをこっちで作っていれば、自然に不用品は捨てられちゃうんだし。


ということで、おもしろいですよ。おすすめ。

 

 

[205]小田 敏弘:『論理的思考のための数学教室』,日本実業出版社,2011年.
 
数学の本が流行っているようで、これもそのうちの一冊かもしれません。

こんな問題が載っています。
6枚のカードの表に1~6までの整数を1つずつ書きます。次に、これらをよくまぜてから裏返し、やはり、1~6までの整数を1つずつ書きます。表と裏に書かれている数の差が、6枚ともすべて異なることがありますか。あるとしたらその例を、ないとしたらその理由を説明しなさい。

すごい面白い本ではないけれど、頭のトレーニングには良いかも。
 
 
[206]克元 亮:『「しきる」技術』,日本実業出版社,2011年.
 
リアル世界で私を知っている人は、しきれない人と分かっていると思います。仕切りたくもないですし(各自、自由にやってプロジェクトが成功して欲しいものです)。

しかし、なんですよ、SQiP研究会委員長とか、JaSST 10周年記念冊子とか、しきらないといけない場面も現れ、まぁ、性格や欠点は直らないものと分かっていますが、それでも役割性格を憑依させることで改善は見込めないだろうか……ということで買った本です。

結論から言うと、それほど目新しいものは書いてありませんでした。

この本に書いてあるアドバイスを10個上げると、

・ 「しきる」にカリスマはいらない
・ 共通のゴールにこだわること
・ 弱い自分をさらけ出そう
・ すぐに行動する
・ 常にフェアであること
・ 厳しい場面でこそユーモアを
・ コミュニケーションすると好感度は上がる
・ メンバーの仕事を理解する(やってみる)
・ メンバーの能力にあった仕切りをする
・ 感情をあえて出すことも必要

といったところですが、「知っている」よね。
知ってはいるけど、できていないんだなー。

気を付けることで少しは良くなるといいな。

★★★

そうそう。この本に書いてあることではないけれど、私が常日頃思っているのは、何名かで移動する時、先頭を歩ける人はしきりが上手ですね。
私とか、先頭歩くと、ついて来ているだろうかと気になって気になってだめです。(笑)
 
 
[207]大野 更紗:『困ってるひと』,ポプラ社,2011年.
 
難病患者の手記で、かつてこれだけポップなものはなかったでしょう。

筆者は今も、皮膚筋炎、筋膜炎脂肪織炎症候群の症状を緩和するためステロイドを20mg程度飲み続けているほどの重症患者です。
病気を特定するまでの死んだ方がマシと思えるほどの検査の様子(麻酔なしで筋肉組織をメスで切るとか)が書かれ、特定されてもこれといって治療できず、副作用や、さらなる試練も待っていたという話です。

けど、この本を読むと、そのような生活の中にも、生きていれば変化はあるし、生きていくためにしなくてはならないことは山ほどある。考えることだってたくさんある。
そして、それこそが生きることなんだということが伝わってきます。

読み物として面白いですので是非ご購入下さい。

ちなみに、筆者のtwitter IDは@wsaryです。
 
 
 
[208]岩橋 正実:『リアルタイムシステム実現のための自律オブジェクト指向』,CQ出版,2002年.
 
リアルタイム制御システムへどうやってオブジェクト指向を適用するかという実用書です。

SESSAMEオープンセミナーで、岩橋さんのAOOの話を聞き感銘し、その後、SESSAME例会に行ったときに島さんがこの本を持っているのを見て購入しました。

来年初めにAOOについて書き改めた書籍が出版されるそうなので(岩橋さん執筆中)、待てる方はそれを待っても良いと思いますが、この本は良い本なので買うのも良いでしょう。

★★★

私が、何をそんなに感心しているかというと、岩橋さんのプレゼン、質問の受け答え、本書に通じて言えるのは、≪リアルタイム制御システムの実装上の問題点≫が先にきちんと認識されていて、それに対する具体的な解決策が示されているからです。

エンプラ系の開発に役立つかは分からないけれど、組込み系の開発者・テスト設計者にはホントおすすめです。定価1,800円の本が中古本でさらに高くなっているのでお勧めしにくいのですが、良い本です。

★★★

さて、この本のタイトルになっている「自律オブジェクト指向(AOO: Autonomic Object Oriented)」についてちょっと書きたいと思います。

本書の自律オブジェクト指向の定義を抜粋します。
一般的なオブジェクト指向の概念では、オブジェクトに対して操作を働きかけることで他のオブジェクトの機能を利用して全体の機能を実現している。このようなしくみでは、オブジェクト同士が動的に密に結合される。

↑つまり、オブジェクト側からすると、受け身なので、様々なオブジェクトからのイベントが重なることがありえるため、リアルタイム処理をしたくても待ち時間が生じてしまうことがあるというのです。
これに対し、オブジェクト間の関連を参照中心としてオブジェクトを独立させる。個々のオブジェクトに一つのみの目的をもたせ、自分自身の目的達成のために自律して振る舞う。そして、自律したオブジェクト同士が協調してシステム全体の目的を達成させる。

↑つまり、言い換えると制御状態(制御のための変数)を自オブジェクト内に持つ(他のオブジェクト内にあるものは参照だけにする)ことによって自律して動作させることができるというわけです。

★★★

これは、オブジェクト指向をリアルタイム制御システムに適用する時のオブジェクトの分け方の工夫であり、ものすごく新しく素敵なことを言っているわけではないのですが、このひと工夫が大切なんだということは実感しています。

というのは、HAYST法のFV表でテストを目的機能単位で分割するのも同じ意味だからです。
(HAYST法の一行を自律テストオブジェクト(ATO: Autonomic Test Object)と呼ぼうとツイートしていた件です)

HAYST法をコンサルしている会社で、HAYST法の適用が進んでくると、機能仕様書をFV表に合わせて目的単位で章や節を分けて記述するということが自然に起こってきます。

そして、開発がスムーズになったという話も聞いているのですが、その理由の一端が本書で理解できました。

この他にも、操作の考え方や、状態の見つけ方の話も参考になります。

 
 
[209]橋本 治:『小林秀雄の恵み』,新潮社,2011年.
 
いつものように、橋本治の思考過程を追いながら、小林秀雄は何を考え、当時の人はそんな小林の文章を何故ありがたがったのかが分かります。

けど、この本の中で、私が、一番好きなのは橋本治が小林秀雄の『本居宣長』を読んで「そうか、学問とはいいものだったんだ」って思ったってところです。
愚かな孫は小林秀雄の『本居宣長』を読んで、「そうか、ちゃんと学問をすればじいちゃんが言うみたいに、自信をもってなんでもやることが出来るのか学問というのは、そういう自信を与えてくれるのか』と思ったのである。だから「もう一度ちゃんと学問をしてみようかな」と思った。

(橋本治は小林秀雄の孫ではありません。念のため)

これは、37歳の時に筆者が思ったことであり、本書は50を超えて精読しなおしたものなので本論ではないのですが……。
 
 
[210]西堀 榮三郎:『ものづくり道』,ワック出版,2004年.
 
何度聞いても面白い話というのはあります。

この本に書かれていることは別の本で読んだことがある話が多かったのですがそれでも大変面白く読むことが出来ました。

★★★

本書は、SESSAME例会で、誰かが「SESSAMEで、日本的なものづくりの考え方をまとめてみてはどうだろう?」と発言された時に、別の人が「それならすでにこんな本があるよ」と鞄から取り出して紹介してくださったものです。

確かに、高度成長時代の日本を牽引した考え方が書かれているので、読み直す価値があると思います。いままで読んだ西堀の本の中でも一番まとまっているように思います。

★★★

さて、西堀は1965年から4年間、日本原子力船開発事業団理事を務めたことでも知られています。

また、別の書籍からの伝聞ですが、原子力船「むつ」に関して、「原子力船の安全性を疑う者は、火を見ておののく野獣」と発言して反発を買ったという事実もあるようです。
その後「むつ」は、1974年に太平洋上で開始された出力上昇試験の開始早々に低出力で放射線漏れが発生しました。そして、帰港せざるを得なくなったのだけれども、地元むつ市の市民は放射線漏れを起こした本船の帰港を拒否したため、漂泊したことはご存じの通りです。

本書で、西堀は、「科学は知的分野の探検である」と述べています。つまり、「科学とは森羅万象における知識を発見すること」です。それに対して技術とは、「科学で得た知識を何らかの目的に結びつけて物を作ること、またはそのシステムを作ること」と定義しています。

つまり、核分裂反応自体は科学の知識であり、単独では善悪はありません。しかし、それが原子爆弾にという多量殺戮という目的に結びつけば悪の技術となり、エネルギーを効率よく生成するという目的に結びつけば善の技術となるというのです。

ただし、
科学というものを利用するのに、人間はよほど賢くあらねばなりませんよ

とも警告しています。

技術者が忘れてはならない言葉だと思いました。
 
 
[211]Jonathan Rasmusson (著), 西村 直人・角谷 信太郎 (監訳), 近藤 修平・角掛 拓未 (翻訳):『アジャイルサムライ』,オーム社,2011年.
 
85ページのマスター先生を除き、写真の裏焼き(着物のあわせが左前)が気になります。
坂本龍馬とか、わざと左前に着て写真を撮ったくらいなので(銅の湿板写真だったのでそうしないときちんとした合わせにプリントできなかった)日本人としては気になります。

まぁ、それはおいておいて、本書ですが、アジャイル開発が成功している現場の様子ってこんな感じなんだろうなというのが分かります。

この本を読み初めた8月31日にツイートしたのは、
アジャイル開発は、「もし、お客様が自分達と同じ開発力と開発にかけることが出来る時間を持っていたらどうするか?」というのを考え、その考えが正しいことをお客様に確認しながら進める方法。

です。本書を読み終えた今も、アジャイルってそういうことなんだろうと勝手に考えています。

あと、アジャイルサムライたちの発表で使われる特殊用語の意味や本質的な利用目的がわかったのが収穫かな。

ただ、この方向を突きつめていくと、仕事をチームワーク良くやる方法とかそういった方向の話になってきてしまって、ソフトウェアエンジニアリングがぼやけてしまうよね。