本棚3
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Gerald M. Weinberg (伊豆原 弓 (翻訳) ):『
パーフェクトソフトウエア』,日経BP社,2010年.
「人間の側面からみたソフトウェアテスト」についての本です。
ワインバーグはこの本で繰り返し、「テストは情報を得るために実施するものである」と書いています。例えば、
キーを打つかどうかにかかわらず、何らかのアクションに影響を及ぼす情報を求めるものでなければ、テストとは呼べない。
といったようにです。
そして、その情報の質については、例えば、第10章の「テストはキーを打つだけではない」の「よくある間違い」に書いてある、
4. カバレッジテストが何かをテストした証明になると思っている
コードのすべての部分を何らかのテストでふれたことを証明できたからといって、その部分が完全にテストされたとはいえない。また、コードをすべてカバーしたからといって、すべての機能を完全にテストしたとはいえない。そういえるためには、テストの関係性と包括性を分析する必要がある。別の言葉でいえば、考え方を分析する必要がある。
や、第16章の「コンピュータを使わないテスト」の「テスト担当者は貴重なレビューアになる」に書いてある、
1. 開発者にありがちな思考パターンの欠点を観察することで、より良いテストを作成できるようになる。
2. 早い段階から仕様書をレビューすることで、テスト計画のスコープを早く決められる。
3. 設計を熟知することで、より迅速にバグを発見し、その絞込みに協力できるようになる。
4. レビューに参加することで、自分たちのテストケース、テスト計画、テストドライバ、ツールの良いレビューアーになる方法を学ぶ。さらに、関係者からテストするものを渡されるのをじっと待っているだけのテスト担当者にくらべ、はるかに早くプロジェクトのスピードに着いていけるようになる。
の1のように、「思考パターンの欠点を観察すること」の重要性を主張しています。
にしさんの「不具合モード」、智美塾、今回のSSでのWモデルの議論の方向性が間違っていないことを本書で確信しました。
よし、いまやってる活動を自信を持って進めよう!と思える一冊でした。
本書の副題は、「知識変換のSECIモデルとQFD」となっています。
野中郁次郎教授の暗黙知と形式知の変換モデルであるSECIモデルと、赤尾洋二先生発案のQFDの関係が明らかになります。
実は、HAYST法のFV表は、QFDの要求品質展開を参考に作りました。
QFDというと「品質の家」とか、「品質展開」という完成形を思い浮かべる人が多いんじゃないかなと思うのですが、原始データから要求品質への変換(シーン展開)から始まる「要求品質展開」というアクティビティがありまして、そこからFV表の原型が生まれました。
# 完成形から学び始めると本質を見落とす罠がありますよっ。
本書では、「要求品質展開」がSECIの「共同化」に当たるといった整理がされているので非常に分かりやすいし、個人的にはFV表の位置づけもそういうこと(共同化から表出化の逆変換)であったかと理解が進みました。
ということで、とてもおもしろい本です。
後半、事例集が載っているのでそこも参考になります。
記号論理とは、命題論理(¬∧∨⇒)とか述語論理(命題論理+∀∃)のことで形式言語を理解するために避けて通れないものです。
本書では、記号理論を「日本語の一番やさしい、分かりやすい部分を記号化したもの」といいます。だから日本語が普通に話せる私たちなら理解できるはずであると。
さて、この本を読み終えてどうだったか?というと、これまでわかっていた部分はすらすらと読め、分からない(モヤモヤしている)部分は相変わらずわからないなぁと言う感じです(先生に怒られそうです)。
丁寧に書いてあるから書いてあることは理解はできるんですよ。でも、この本のように考えられるかどうかというと……残念ながらそんなことはなく(泣)。
★★★
実は、齋藤先生には、大学の時に線形代数を教わりました。
単位行列とか逆行列とか、それらを用いた方程式の解き方とかの授業を受けた記憶があります。
今から思えば、もっとちゃんと勉強しておけばよかったなぁと思います。>行列
1982年以来NECが長年培ってきたソフトウェア品質管理の体系やノウハウを公開した本です。
本書に書かれている方法は、わかりやすく、どこの会社においても明日にでも採用できる容易な方法です。
「えっ!?そんないい加減でいいの?」「もっと複雑な理論式を使った方が合うんじゃないの??」と思われる読者の人も多いんじゃないかと思うくらいです。
しかし、「そこが落とし穴なんだよ」と教えてくれているように思うのです。
★★★ たとえば「バグ収束モデル」について筆者は、様々なモデルを当てはめた結果、最もフィッティングする曲線を採用するのは、「単に説明に都合の良いソフトウェア信頼性モデルを選択することになってしまい(……略……)責任者の直観に頼ることと同じである」と喝破しています。
では、NECではどうしているかというと、式で予測精度をあげるのではなく、テスト終盤において「バグ傾向分析」をしっかりと行って全員の知恵を結集するとともに「バグ分析と1+n施策」によって残存する課題に対して考えられる限りの品質向上施策を実施して課題を取りきるというのです。
「品質会計におけるバグゼロ」とは、組織として蓄積したすべての経験と知識にもとづいて考えられる限りの確認をした結果、バグが検出できなくなったことを意味する。
といいます。ソフトウェアの品質管理の王道ってこういうことなんだと改めて感心しました。
スパイラルアップを続ける組織におけるリーダの考え方を学ぶことができる貴重な一冊でした。
[125]
野内 良三:『
日本語作文術』,中央公論新社,2010年.
文章讀本のような本が好きです。ウェブで読めるものとしては、Kazuさんの『
正確な文章の書き方』や、結城浩さんの『
文章を書く心がけ』が好きです。本書もそういった本のひとつです。
★★★
本書の目標は「達意の文章」です。はじめにに、
達意の文章を書くための基本方針は「外国語を初めて学んだときの姿勢で日本語を見直そう」ということだ。「初心忘るべからず」である。だから普段なにげなくやり過ごしている基本的なことにも目配りした。文の長さ、読点の打ち方、語順、「は」と「が」の使い分け、段落の立て方などをしっかりと押さえた。特に、論証(説得力)との関連で段落の問題をていねいに説明した。
とあります。
したがって、とても実用性の高い本です。実用性を重んじるので、「起承転結」ではなく「結起承展」を勧めています。「展」はタイプミスではありません。
起承転結はいかにしたら読者に「感動」を与えることができるかを意図している。エッセーには向いているかもしれないが、実用文では絶対に真似をしてはいけない。実用文には脱線は禁物である。大切なのは「転」ではなく「展」である。話をさらに展開しなければならない。話をさらに掘り下げなければならない。転じるなんて飛んでもない。
という意味です。
この他にも、「文が曖昧になるよりは、うるさくても遠慮なく接続詞と指示語を使うことをおすすめする」といったアドバイスは、他の文章讀本にはあまり見られないのではないでしょうか。
★★★
本書のもう一つの特徴は、日本語とヨーロッパ語を対比して、日本語の性質を理解したうえでその弱点を補う作文をすべきとしている点です。
日本語は基本的には主観的判断(と思う)か事実の記述(雨が降る)しかできない。
(1)あなたは悲しい。(You are sad.)
(2)彼は悲しい。(He is sad.)
(1)と(2)は英語なら問題ないが、普通の日本語では不自然である(たとえば(2)は小説の中なら可能だろう)。自然な日本語なら次のようになるはずだ。
(1)’あなたは悲しそうだ/悲しそうに見える。
(2)’彼は悲しそうだ/悲しそうに見える。
翻訳をしていると、英語には必ず主語があり、それをそのまま日本語に直すととってもうざい文書になることがわかります。また、逆に日本語を翻訳ソフトにかけるといかに主語がない文章が多いか唖然とします。
(上の文章も主語が書かれていませんね)
本書では「無生物主語」を立てることで、論理的な文章になるとしています。そして、「名詞中心文を動詞中心文へ書き換える」ことによって、日本語らしい文章になること、また、逆をすることによって論理が明確になることを示しています。つまり、「名詞中心文を動詞中心文へ書き換える」のであれば、
[1]名詞は動詞に換える
[2]形容詞は副詞に換える
[3]無生物主語は原因・理由、手段・条件、あるいは場所・時間の表現に換える
のステップを踏みなさいと具体的に方法を示しています。
★★★ さっき気が付いたのですが、文章讀本って、単に「この文章は悪文だ」と書いているのではなく、「これこれこういう理由で、ほら実用文としては名文と言われたこの文章もいまいちでしょう」と悪文の原因を分析して悪文を書かない方法を伝えているじゃないですか。
これって、ソフトウェアテストが目指しているものととても近いと思うのです。本書でも、句読点の打ち方で文の作り方を解説し、そのあと接続詞と指示語を使うことで文と文との接続の仕方を教え、段落の切り方で意味のまとまりについて説明しています。
私のソフトウェアテストのとらえ方も同じで、今度、SQiPシンポジウムで、「
体験! テスト技法:点 、線、面、立体、四次元の観点で」というタイトルで併設チュートリアルをするのですが、まったく同じ視点でやろうとしています。
ということで、そういう類の(分析とか)が好きなんでしょうね。>自分
「角の三等分」という有名な問題があります。ギリシアの三大作図問題の一つで、
どのような角が与えられても定規、コンパスを規定通り有限回用いて、その角の3等分線を見出せる方法はあるか?
というものです。
この問題は、「不可能」であることがわかっているのですが、数学でわかっているとは、証明済みであるということになります。
そして、証明するためには、コンパスと定規の定義から始まり、この問題であれば「コンパスと定規のみで作図できる」ということはどういうことだろうか? ということを見出さないとなりません。
ある図が作図可能である必要十分条件は、作図に必要な長さを、与えられた長さから四則演算と開平算の繰り返しでつくることができることである。
ここまで来て、問題は幾何学から代数に変換され、解くことができるようになります。
★★★
本書では、ユークリッドの『原論』からゲーデルの不完全性定理まで、不可能をどのようにして証明してきたかが書かれています。
「数学を鑑賞するツボ」の指南書といってよいでしょう。
もちろん、おもしろい問題ばかりで、
「この文章の中には数字1が〇個ある」
この〇の中に0から9までの数字のどれかを入れて「 」内を正しい文章にせよ。
とか、思わず、にやりとしてしまいます。
もちろん、この問題も何故不可能なのかについて解説されています。
★★★
省みると、自分も「その問題がなぜ解けないのか」についていい加減にしたまま議論を進めていることがあるなあと思います。
まず、問題を正確に定義して理解することと、解けない理由を証明しないといけないなぁと思いました。
たとえば、「バグをゼロにすることは不可能」についてなら、「バグ」の定義が必要でしょう。
「バグがゼロ」とはどういった状態を指しているのか? また、「枯れてきてバグが出ないソフトウエア」とどう違うのか等々について考察しなければなりません。
そして、自分は何がしたいのか……。
[127]Dave H. Hoover (著), Adewale Oshineye (著), 柴田 芳樹 (翻訳):『
アプレンティスシップ・パターン』,オライリージャパン,2010年.

7月2日に翻訳者の柴田 芳樹さんから献本いただきました。どうもありがとうございます。
さて、一見、舌を噛みそうなタイトルですが、実際に口に出してみると意外と大丈夫なので安心して声に出して読んでみましょう。せーの、、、という話は、置いておいて、「アプレンティスシップ」ってご存知でしょうか? 私は知りませんでした。
で、サブタイトルに目をやると、「徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得」という、、、おい、この日本語はどこで切れるんだい? というものです。
[徒弟制度に学ぶ] [熟練技術者の技と心得]
[徒弟制度に学ぶ熟練技術者の] [技と心得]
[徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技] [と心得]
うーん。読み終わった今、考えてみるとどれも違う気がします。
いただいておいてなんですが、タイトルとサブタイトルで損してないですか??
自分なら、
タイトル:徒弟制度に学ぶ!ソフトウェア開発者を極めるための行動パターン
サブタイトル:志あるソフトウェア職人への手引き
とかにするなぁ。うーん。うーん。
タイトルは出版社マターなので、柴田さんには選択の余地がなかったのかもしれませんが……。
★★★
さて、本書は、成長中の意欲を持ったソフトウェア職人が、指導者または業界の全体とコミュニケーションをとる役割になるまでに直面する様々な難題に対して、どのような「行動パターン」を取ればその壁を乗り越えることができるかについて書かれています。
ここで、成長中の意欲を持ったソフトウェア職人のことを“アンプレテイス”(apprentice)と呼び、指導者のことを“ジャーニーマン”(journeyman)と呼んでいます。
見習い奉公中の職人が“アンプレテイス”で、徒弟奉公を済ませた一人前の職人が“ジャーニーマン”なのですね。
“ジャーニーマン”の上に位置する“熟練職人”(master)というのもあります。
スターウォーズのジェダイ・パダワン(Jedi Padawan)、ジェダイ・ナイト(Jedi Knight)、ジェダイ・マスター(Jedi Master)のようなものです。
★★★
本書では、各パターンごとに「パターン名」「状況」「問題」「解決方法」「行動」「関連項目」でその問題に対してどういう行動をとればよいかが示されます。
多くのパターンは「やっぱりそうであったか」と自分の経験から納得できるものでした。
したがって、アンプレテイス達は道に迷った時に本書を読み返すことで明かりがみえると思います。
ちょっと読みにくい(例えば日本語としては「あなた」という単語を消した方が読みやすいところが多いように思いました)のですが、参考になる(考えさせられる)ところの多い本でした。
以前、『エンジニアのためのWord再入門講座』を読みましたが、そちらは、「スタイル」の使い方を中心にWordを理解しようという本でした。
この『Wordのストレス解消読本』は「書式」を完全に理解することでWordの奇妙な動きの原因を知りストレスを解消しようという本でした。
この本には、いくつか名言があります。
例によって言語明瞭意味不明なオプション名
とか、笑ってしまいます。この名言は[リンクされたスタイルを使用不可にする]というオプション名を皮肉ったものですが、たしかにこの名前から「このオプションをオンにすると、リンクスタイルは常に段落スタイルとして働き、文字スタイルとしての機能は使えなくなる」という意味はわかりませんんよね。
★★★
図が、あっちへ行ったりこっちへ来たりという問題について、本書では図のアンカーを「見出し段落に固定する」、つまり、アンカーを表示して、それを(ページ移動しない)見出し段落にドラッグして、[レイアウトの詳細設定]ダイアログボックスの[アンカーを段落に固定する]オプションをオンにするという方法を勧めていました。
確かに良いかもしれません。
[129]
安藤 博, 白井 豊, 辻 淳二, 今井 賢一, 久保 宏志, 玉置 彰宏, 浜田 淳司:『
ソフトウェア進化論』,NTT出版,1989年.
JUASで講演をしたときに玉置先生にお会いし、面白いパワフルな先生がいるのだなぁと興味を持って何か著作をと思い、買った本です。
共著者のなかで久保 宏志先生(もと帝京大学教授)の名前を聞いたことがあるなぁと思ったら『
富士通におけるソフトウェア品質保証の実際』の監修者でした。なるほど。
久保先生が、
シグマ計画は、まさにソフトウェア産業界にインフラを与えようとするもので、日本のソフトウェア業界と官僚が手を組んで発案したヒットといえよう。
というのには、時代を感じました(私の記憶では、1989年にはすでに破たんしてたけどなぁ)。
★★★
玉置先生はこの本では、産業面(つまり利用者の側面)からソフトウェアの今後を論じていて興味深いです。コンピュータを誰が何の目的で使うのかということをしつこく書いています。
この当時は日興証券の日興システムセンター取締役だったのですね。
★★★
この本に書かれているソフトウェアを作る側の問題点は今もほとんど変わらずというのがちょっと悲しかったですね。
ソフトウェア工学のページは、白井豊氏が書かれているのですが、
まず、一人のプログラマーが自分で見渡せる作業範囲には当然のことながら限界がある。だいたい二〇〇〇行ぐらいだとされている。ところが通常のソフトウエアは、これをはるかに上まわる。
(略)
ところが、厄介なのは複雑にからみ合ったプログラムの実行順序やプログラムの記述要素(ステートメント)間の誤りである。
(略)
自分自身の誤りには奥深い、いろいろな原因がある。その一つは、ソフトウェアの機能そのものに関わることである。プログラマーがソフトウエア開発の依頼者の意図を取り違えていることがある。あるいは依頼者自身が意図を十分に伝えていないこともある。
(略)
二つ目に、複数人で開発されることにともなう問題である。数十人で一斉に設計を始めるわけだから、担当者間の連携をはかる必要がある。
(略)
三つ目は、ソフトウェアの複雑さに伴う人間の側の設計ミスである。
と、今のままです。
この本から、20年経って、確かにソフトウェア(アプリケーション)は進化していると思うけれど、ソフトウェアを作る側の問題点はそれほど解決していないなぁと思いました。
(まぁ、高々20年ですからね。これからに期待です)
川喜田二郎は、言わずと知れたKJ法の生みの親ですが、昨年お亡くなりになっています。本書は、『
創造と伝統』(1993年)という本の「I 創造性のサイエンス」部分を新書化したものだそうです。
★★★ 本書のテーマは「文明の立て直し」です。
この本は、今や「没我」つまり「われを忘れて」という文明が必然になる、 -- snip -- 他方では、巨大な生き物である「世界」を、その内面からの共感で悩もうではないかと訴えているのである。
と述べています。
それは、本書でいうところと創造性の三カ条、すなわち「自発性」「モデルのなさ」「切実性」につながります。
この三カ条をできるだけ高度に持っている「ひと仕事」ほど、それは創造的な行為であるという結論になった。
というのです。
★★★ つまり、自分がやりたいからやるんだという底の浅いものではなく、全体状況が自分にこういうことをやれと迫ってくるから、やむなくやっているという絶対感があるもので、それは絶対的受け身ということでもある。
と言います。
私の好きな「他力」につながる発想だなぁと思いました。そういった感覚で動いているときほど振り返るとよい仕事ができているものです。
★★★ KJ法についてこの本ではほとんど書かれていないのですが、企業の教育担当者から、
じつは先生、KJ法なんかを使っても、何も価値のあるアウトプットは出ないですよ。だけど、われわれが重要視するのは、あれを使うと社員がやる気を出して盛り上がるからですよ
と言われたという話が載っていて興味深かったです。
川喜多先生に面と向かって言ったとなっているのでそれもびっくりです。
まぁ、そういった心得違いはどこにでも転がっているのかもしれません。ゴールと、結果の状態を錯誤しているのですね。
★★★ 最後に、創造的な小グループ(スモール・グループ)の話がでて、日本でいえば、松下村塾のような強力なチームがなぜできるのか、そこにも、創造性というのが深くかかわっているという話が書かれています。
[131]
高橋 伸夫:『
組織力』,筑摩書房,2010年.
SQiPシンポジウムの特別講演を聴いて読んでみたくなりました。
「組織」は、どんなときに「組織」として見えるのか。筆者はこう書いています。
近代組織論の創始者バーナード(Chester I. Barnard)は、二人またはそれ以上の人々の諸活動または諸力が意識的に調整されているときに、「組織」--これをバーナードは協働システムと呼んでいる--として見えるのではないかと考えた。
……略
実は、バーナードの非凡なところは、先ほどの公式組織の成立条件として、次の三つを提示した点にあった。
① コミュニケーション
② 貢献意欲
③ 共通目的
言い換えれば、この3条件が満たされたとき、われわれはそこに「組織」を見るというのである。
この組織の定義にはすごく納得しました。
某ML(GA)を横目で見ていて確かに危険水域ではあるけど、大丈夫と思ったのも、コミュニケーションはなんとかとれているし、メンバー全員が貢献しようと頑張っているし、目的はなにより明確だから組織として成り立ってると思ったからなんだなと自分の勘を論理的に理解することができました。
逆に、一見どんなに波風が立っていなくても、会うことも少なく、貢献することもなく、目的もよくわからないと、組織名はあって名前も連ねていても成り立っていないというか、、、いやいや、あれは、組織が必要なわけじゃないからそれでよいのですが……。
★★★
筆者の最後のまとめが気に入ったので引用します。
私たちは、努力している若者が好きだ。人には見えていないような陰の部分でも手を抜かず、一生懸命にやっている若者が大好きだ。もう少し要領よくできないものかと、いつもハラハラしているが、たとえ、すぐに結果は出せなくても、私たちは、君たちのする事をずっと見守っている。だから、いつか、君たちの力を本当に必要とする日がきたとき、私たちは迷わず君たちを選ぶだろう。そして、君たちと仕事をともに出来ることを心から誇りに思うはずだ。これは偉そうに、上から目線で言っているわけじゃない。君たちのファンとして言っているんだ。
ソフトウェアテスト業界もいい若者が育ってきていますよね。

Amazonのカスタマーレビュー(masuda220さん……って増田さんかな?)が素晴らしいので本の紹介や解説はそちらを読んでもらえれば完璧です。w
蛇足ながら付け加えるなら私は、「第4章 品質特性シナリオ」が一番参考になりました。そこには、こんなことが書いてあります。
まず簡単に言うと、アーキテクチャは、基本的に機能要求と非機能要求、そして制約条件と前提条件などから導かれる。ちょっと補足すると、前提条件は「お金はいくらでも使って良い」というプラスの条件、制約条件とは「予算は100万円以内」とかマイナスの条件のことって僕は区別している。
品質特性シナリオには重要な品質特性ごとに、これから作ろうとしているモノ(成果物:artifact)に対して、誰が(刺激の発生源:source of stimulus)、どんな時に(環境:environment)、どんなことをすると(刺激:stumulus)、どういう結果が(応答:response)、どれくらいで返ってくるか(応答測定:response measure)を描くんだ。
注意してほしいのは「誰が」っていうのは必ずしも人ではないってことだ。
あと「どのくらいで返ってくるか」というのも時間だけじゃない。資金などのコストやアンケート結果のパーセンテージってこともある。基本的には定量的に測定できなければならないんだけどね。
それと、これは一般的な品質特性シナリオにはないんだけど、僕は誰が(刺激の発生源:source of stimulus)ってところい、どんな状況(status)なのかっていうのも、付け加えたりするんだ。こいつは、最近のシステム利用者っていうのが、空調の効いたデスクの快適な椅子に座ってパソコンからシステムにアクセスしているだけじゃなくなってきているからなんだ。たとえば、システム利用者が屋外にいて走っていたり、自宅のソファに寝転がって画面を横にして見たりとか、そういうことも考慮する必要があるからなんだ。つまり、こうした追加項目がないと、モバイルを端末にするって話が出てこないんだな。
これを読むと、アーキテクトがアーキテクチャを作る前に分析していることってテスト技術者がテスト分析(テスト要求分析)で分析している内容と同じなんだということが分かります。
ということで、テスト関連の人は、第4章を読んでおくといいですよ。おすすめです。
★★★
清水吉男さんの派生開発の話が載っているのですが、原著でも載っているのかな。
Amazonで一生懸命検索したのですが原著がみつかりませんでした。
異業種の人の書かれた本を読むとこれまでにない視点が得られて面白いです。
(この本で、品質の定義が「品質とは違いである」となっていることとか)
本書は、「期待マネジメント工学(EM)」という考え方を提唱しています。
EMを一言で言うならば、「お客様の期待を最大限にかなえる」ことを商品開発の戦略としようということです。筆者は、
お客は「より良い解答」、すなわち、より高級化を求めているのではない。前述のコンサルタントの話に戻ると、コンサルタントが良い解決法を示しても、なぜ社長(お客)が喜んで受入れないのか? それは、お客は実は「自分なりの期待、解決法」をもっているだけではなく、すでに自分ありの問題設定をしているか、あるいはそれへの期待を持っているからである。すなわち、コンサルタントとして重要なことは、「いかに問題を解決するか?」よりも、「いかに問題を設定するか?」についてのサジェスチョンをすることが重要なのである。山頂到着が最終目標であるとしても、短時間、短距離で登りたい人もいれば、景色を眺めながらのんびりと登りたい人もいるだろう。それにより、問題設定は大きく異なるのである。
と書いています。そして、「問題設定=戦略」というのです。
★★★
この考え方を商品開発に適用すると、これまでは、技術(戦術)を磨き、良い製品を作りさえすればお客様も喜び企業も発展すると思われてきたけれど、そうではなく、技術(戦術)よりもどこを狙うかの問題設定(戦略)で勝負が決まるということになります。
今ある技術を組み合わせれば、例えば、機械の健康状態をモニタリングして適切に補修サービスを行うことができます。
そうすれば、「お客様に対して“使い慣れ、習熟した機器”を使い続けていただく」(PHM = Prognostics and Health Management)を実現できるのです。
考えてみると、私の会社の複合機などは、Networkを利用してトナー切れやドラムの使用量をモニタリングして、お客様から「写りが悪くなった。直してくれ」と言われる前に「そろそろ、消耗品の寿命が近づいているので補修しましょうか?」というサービスビジネスを行っています。
これを進め、補修をお客様自身が安価な部品を交換することでできるようになれば、さらに便利になり期待に応えられるのです。
★★★
筆者は、EMを実現するために生涯価値(LTV = Lifetime Value)にも着目するように勧めています。
お客様の生涯を通じて価値を提供しつづける商品を考えなさいというのです。商品を提供することによってお客様が発展し、もっと上級の商品を購入するようになる、、、そんな戦略を考えるとよいとのことです。
★★★
ソフトウェアについての記述も若干あり、そちらはSaaSやクラウドコンピューティングをEMの視点で論じたものでしたが、ちょっとピンときませんでした。
Twitterで少し話題になって、買った本です。
読み始めてから気がついたのですが、大学の時に読んでいました。orz
でも、読んだと理解できたとは違うのである意味、新鮮に読めました。
といっても、最後の「第10章 算法表現(プログラム)の証明論」になると、あぁ、また、C. A. R. Hoareか……と(笑)。
むかし読んだ時も、木村泉先生のところは面白く読めて、米澤明憲先生のところはつっかえながらしぶしぶ読むという感じだったなぁと思い出しました。
といったように私にとって難しい本ですが、米澤明憲先生の"actor計算モデル"の解説のところは、読み返すことができてよかったなーと思います。
本書には、UML初心者を対象に、自分が行ったモデリングが正しいのかどうかセルフレビューする方法が易しく書かれています。
テストエンジニアが設計レビューに参加する時にも役に立つと思うのでそういった意味でも読んで欲しいと思います。
びっくりしたのは、モデリング結果を日本語にして読んでみるという方法です。いや、それを知らなかったからびっくりしたのではなく私がいつも行っている方法だから驚いたのです(私のやり方は、普通だったんですね

)。
つまり、
・ユースケース図
「アクター名」+は+「ユースケース名」
良い例) 「ユーザ」は「郵便番号を検索する」
悪い例) 「ユーザ」は「検索する」
悪い例) 「ユーザ」は「DBから郵便番号を検索する」
・クラス図の属性の適切さ
「クラス名」+の+「属性名」
良い例) 「プロジェクト」の「予算」
悪い例) 「プロジェクト」の「プロジェクト予算」
といった具合にモデリングされた図を日本語に変換しながら読んでみる方法を勧めていて、それって自分がやってたことだなぁと。。。
★★★
本書で気になったのは「言い切り」が多い点です。
非機能要件には分析という行為はありません。
ユースケース仕様書は、通常A4サイズの用紙で3枚から8枚のボリュームを持っています。
パッケージの大きさが適切かどうかを検証するためには、パッケージに格納されているクラスの数を数えてみることです。
適切なクラスの数は、「5~9クラス」です。
このような断定は、初心者にはあるいは良い指針を与えることになるのかもしれませんが、根拠に乏しいものもあり気になりました。
でも、全体的に良書なのでお勧めです。
執筆者には、渋川よしきさん、懸田剛さん、天野勝さん、小井土亨さんらがいます。
9年前ということとXPの啓蒙本なので割といいこと中心に書かれています。
★★★
「3.6 テストすべき項目」という節があって、そこには、
・ コントラクトテスト
・ 入力値範囲テスト
・ パステスト
・ 外部状態テスト
・ 例外テスト
とされていました。
早稲田大学国際教養学部教授の筆者は構造主義生物学者だそうです。
したがって、本書の初めの方は、構造主義の本を読んでいるようです。たとえば冒頭の一節。
なんであれ、何かを分けるためには、何かになまえをつける必要がある。モノになまえをつけなくともモノは分けられると言うかも知れないが、でたらめに分けるのでない限り、少なくとも分ける基準がいる。基準は名とは限らないが、他人に伝えようとすると、それはただちに名になる。
筆者は、「モノに名前をつけることは最も初源的な分類である」といいます。
そして、固有名と一般名(普通名)に分けてコトバと概念の関係をあきらかにしています。この辺は、哲学書を読んでいるようで面白いです。
★★★ 実用的な側面としては、何かをAと非Aに分けて非AにBという名前を付けることの問題点の指摘は大切と思いました。
例えば、脊椎がある生物と脊椎が無い生物とに分類することは、一見何の問題もないように思えるのだけれど、この2つのグループは「必然的に等価ではない」というのです。
なぜならば、脊椎があるという基準は人間が感覚によって重要であるとみなして採用した基準であるが、脊椎がないという基準は、脊椎があるのをピックアップした単なる残りだからである。言い換えれば、脊椎がないという基準は、我々の感覚が何らかの同一性をもつとみなして採用した基準では決してない。だから脊椎がない動物の中には、外骨格をもつもの、骨片をもつもの、ただグニャグニャしているもの、など雑多なものがいっしょくたに放り込まれているのである。
つまり、我々がよくやってしまう「その他」という分類は分類にはなっていないのですね(その他がいけないのではなく、分類できていないものがあるという認識を持つことが重要と思います)。
★★★ そしてつきつめて考えれば、分類するということは書名にあるとおり分類した者の「思想」の反映というか、思想そのものであることも重要な指摘と思いました。
層別、KJ法、テストでいえばNGT等々はみな、分類し、時に分類したものに名前を付けることを行っています。これらすべての分類は人為的な分類であり、
従って、すべての分類は本来的に恣意的なものである。
わけです。
認識するしないにかかわらず分類がアプリオリに存在するという立場をとった学者(例えばワイリー)もいますが、筆者はそれを明確に否定しています。
私の本です。
本書では、ソフトウェアテスト技法の話を書いているのですが、
・ 自分が役に立った経験があり使っている技法に絞る
・ 役に立つフリーのツールがあれば紹介する
・ 日本人が考えたことも紹介したい
・ 誰が読んでもわかる
・ 実践できる
といった本にしたいと思って書きました。
そのために、例えばCFD法について書きたかったので松尾谷さんにお願いしたり、鈴木三紀夫さんに三色ボールペンのところを直してもらったり、加瀬さん、鶴巻さん、判谷さんにツールの了解を取ったりしました。
とても驚いたのですがみなさん「どんな本なの?」とか質問もすることなく「いいですよ!」と二つ返事でOKを出してくださったのです。テスト業界の人ってみんな優しいなぁと思いました。
本書の目次は、
第1章 点に注意を向ける
第2章 線を意識する
第3章 面で逃さない
第4章 立体で捉える
第5章 時間を網羅する
第6章 多次元の品質
となっています。
順番に例題19問、演習問題12問の計31問を解きながら読み進めることによってテスト技法を身に着けることができます。
本書を紹介してくださったブログを紹介します。
[139]出原 栄一:『図の体系』,日科技連出版社,1986年.

Twitterで、@mkoszkさんが、
本を開いて一目見ると、なんじゃこりゃってなります。そこで諦めず半年ぐらい眺めていてね。
とTwitterにつぶやいていまして、そんな酒の肴のような本があるなら読まねばと思って買ったものです。
確かに、先人が工夫に工夫を凝らした良い図がたくさん載っていて引き込まれます。見ているだけで楽しいです。
それだけでなく、図形の分類を、
(1) 配置による関係づけ
A 遠近配置(集める)
B 配列(並べる)
(2) 図形の指示機能による関係づけ
A 連結図形(結ぶ)
B 領域図形(分割する,囲む)
の4象限に分けて解説しているところが参考になりました。
先日ツイートした、
マインドマップなどの要素を連結するタイプの図形はボトムアップ型の思考を助け、表などの領域を特定してから要素を埋めるタイプの図形はトップダウン型の思考を助ける。
だから、FV表の前にマインドマップで6W2Hを描き、FV表の後にラルフチャートとFTAを描き、最後にFL表を作る。つまり2つの思考を行き来しながら詳細化する。
は、この辺を読んでいるときに思ったことです(Twitterをメモ代わりにすることがあるので、たまに唐突なつぶやきがあったらなんか読んでるんだなと思ってくださいねー)。
立体や錯視については少しだけだったのでそれがちょっと残念でしたがとても面白く読めました。
[140]石川馨:『品質管理入門』,日科技連出版社,1989年.

「なんで今頃感想文を?」とか「あ。また読み返したの??」と思われている方もいらっしゃるのではないかと思います。
本書は、日本の品質管理の父であり、特性要因図を作った(特性要因図は、別名ishikawa diagramといいます)石川馨の(おそらく)一冊目の本の第3版ですから。
石川馨は日産化学工業で働いた経験を生かして現場で数々の名言、たとえば「品質管理は教育に始まり教育に終わる」を残したことでも有名ですね。
水野滋、朝香鐡一らと並ぶ日本の品質管理の第一世代の代表者の一人です。
にしさんの所属していた研究室のルーツにあたるそうです。
そんな日本の品質管理の第一人者の代表著作をまだ読んでいなかったのですねー(というよりも、実は、1冊も読んでいなかった!)。
読んでいなかった理由の一つは私が所属している富士ゼロックスはTQCが盛んだったけどTQCの精神は朝香鐡一先生に、現場の工学的な展開は田口玄一先生に教わっていたので流派が違っていたという点が一つ。また、社内講習が充実していたため特に本を読んでまでは、、、といった感じだったのです。
と、言い訳してみたり……。
★★★
結論から言うと、日本的品質管理の考え方を理解するのに最適な本だと思います。バイブルといってもいいかもしれません。
quality controlという言葉は、quality of product(製品の品質)という意味に限定せず、質管理、さらに広くいえば経営の質の管理ということもできる。
という言葉は、石川馨の考え方をよく表していると思います。
色々悩んだら何か書いていないか探してみるといった使い方が良いのではないでしょうか。
例えば、先日@ikedonさんとTwitterでやり取りした目的と手段についてはこんなことが書いてあります。
何を改善したいのか、どこに問題があるのか、何が目的かということを決定して、しかる後どんな方法で改善したらよいかが決まる。したがって、目的が決まらなければ、必要性がなければ、方法・手段の改善は考えられない。すなわち、目的が必ず先行しなければならない。
これは、@ikedonの主張と根を同じくするものと思います。
ところが、筆者は続けて、
また、いくら目的がはっきりしても、あとの半分、すなわちその改善を具体的にどう実行していくのかという方法や手段すなわち工程の改善が行われなければ、いわゆる旧式な目標管理、精神的管理となり、実際に効果を上げ、それに永続性をもたせることはできない。目的を達成するための具体的な方法、手段、工程の改善が重要である。この工程の改善には、しっかりした解析を行うことがたいせつであるが、それには知恵、経験、技術的知識および統計的手法が大きな役割を果たす。
とも書いてあります。
書籍としては、とても分かりにくい書き方だと思うのですが、現場に行ってコンサルティングや改善活動を進めていると、どうしてこういう書き方になるのか、とてもよくわかります。
それは、現場の発達段階があるからです。石川馨はこの項の最後にこんなことを書いています。
しかし、日本人のクセで、形式や方法が整えば自然に精神や目的もしっかりしてくることが多いので、とくに封建的な雰囲気のところでは、QCの導入時期においては形式や標準化から進めていくのも1つの方法である。しかし、しばらくしたら目的的に推進していかなければならない。
と、このように、何かヒントになることが書いてあるので未読の方は読まれ、既読の方も折に触れて彼の考え方をツールの一つとして吸収されるとよいと思います。
[141]飯塚 悦功:『Q-Japan』,日本規格協会,2008年.

飯塚先生(にしさんの先生ですね)が日本品質管理学会の会長に就任されたときに「Q-Japan構想」を提唱されました。
その内容は、第24回ソフトウェア品質シンポジウムで報告されましたが、本書は、上記リンク先の資料を詳しく解説したものになります。
大きな視点の話で、とてもおもしろく読めました。
ぜひとも経営者や政治家に読んでほしいですね。
個人的にはJIS Q 9005の作成意図についての次の文章が心に残りました。
2005年12月に発行したJIS Q 9005(質マネジメントシステム-持続可能な成長の指針)では、自分で自己評価基準を作成する、満点のない自己評価を推奨している。これがいたって評判が悪い。満点のない試験は駄目だという。ほかと比べられないと非難される。ほかと比べてどうするのだろう。自分であるべき姿を描き、その基準に照らして評価すればよいと思う。なぜすべての会社を同じ尺度で評価しなければならないのだろうか。
私は変わっているのかもしれない。私は、ISO 9001の審議に長いことかかわってきた。困ることの一つは、国内対応委員会委員のほとんどが“どんな規格になったか”に関心を示すが、“どんな規格にすべきか”に関して強い主張をもっているわけではないことである。情報収集が主なのである。日本人は、国際化というと、国際的といわれるもろもろを受け入れることだと思っている。前述したように、私は、他国を自分の流儀に染めることもまた国際化と思っている。日本人は、標準化というと、標準に上手に対応しようと思うらしい。私は、自分に都合のよいルールにするように立ち回ることも標準化の重要な活動と思っている。私はえげつない卑しい人間らしい。自分に都合のよいようにルールや基準を設定するという発想がハナからないのが、典型的日本人なのだろう。
前半について、JIS Q 9005/9006は自己評価の規格であり認定のための規格でないのでそこは気を付けないとなりませんが認定モデルとして採用しても面白いと思いました。
後半については、幸いなことに、ISO/IEC 29119の国内対応委員会委員は「えげつない卑しい人間」が多いようです(笑)。私も、そうなので励まされた気がしました。
★★★
さて、YouTubeに飯塚先生のインタビューがアップされているのですね(それも全15話のロングインタビュー!!)。
http://www.youtube.com/user/yusakunakao#p/u/14/RPT5DVgkM6c
すっごくおもしろいです。
[142]太田 光、田中 裕二、西成 活裕:『爆笑問題のニッポンの教養 万物は渋滞する 渋滞学』,講談社,2008年.

渋滞が発生する仕組みを科学した本です。
NHKの番組(爆笑問題のニッポンの教養)を文字起こししたものです。
渋滞学について一番わかりやすい入門本になっていると思います。
渋滞が発生する要因は、
・ 車間距離が40m以下
ちょっとのことでブレーキを踏んでしまい、それが後続車に伝搬する
・ 1台しか前を見ないで運転している
全体の流れが分からないので徐々に速度を調整できずブレーキを踏んでしまう
だそうです。では、何故車間距離が詰まるかというと、緩やかな上り坂に気が付かず速度が遅くなって詰まったり、トンネルでの速度ダウン、踏切手前の一時停止等々で要は速度を落とすからですね。
つまり、渋滞を起こさないためにはブレーキを踏まない、ブレーキを踏まないためには車間を空ける、車間を空けるためには3~4台先を見て流れをつかんで運転し、ちょっとずつ譲り合うことが大切とのことです。
★★★
それから、「行列待ち時間速算法」が載っていました。
10人並んでいる行列に自分が並びました。そこから1分間測るんです。で、自分が並んだあとの1分間に、自分の後ろに何人並ぶかを数える。そうですね、自分が来てから1分間に2人並んだとしましょう。すると、自分が着いてからサービスを受けるまで、10割る2であと5分。
式にすると、
待ち時間×人の到着率(人数/分)=待ち人数
なので、待ち時間が逆算できるというわけです。
ディズニーランドの行列も、食券チケット待ちも全部この式で行けるそうです。便利ですね。
★★★
さて、仕事で考えてみると「アジャイルを導入したんだけどイテレーションでやると決めたことが終わらなくて次のイテレーションに回されて結局全体として上手く進まない」なんてことありますよね。
あれも、渋滞なんじゃないかと思いました。とすると、イテレーション間には適度な間隔が必要で、全体の流れを見ている人も必要となります。
もっと大きく、プロジェクトもそう。ある製品のテストが終わったら間断なく次の製品のテストがやってくる。一見、効率的に思うけど、実は一歩引いてみると渋滞が起こっているかもしれません。
テストが終わったらテスト結果のレビューをして是正処置を取るという間をおいて次のテストに進んだ方が全体としては早く仕事が終わるのではないでしょうか。
本書は、「車、群衆、アリ、魚、お金、会議、漫才の笑」等々、様々な渋滞を取り上げて面白く解説しています。お勧めです。
[143]福岡 伸一:『ルリボシカミキリの青』,文藝春秋,2010年.

新幹線のお供に何か雑誌でも買おうという時につい『週刊文春』を選んでしまうのは福岡 伸一のエッセイがあるからです。
もちろん、阿川佐和子の「この人に会いたい」も好きだけど。
本書にはその福岡ハカセのエッセイが70編詰まっています。
タイトルにもなったルリボシカミキリは、それはそれは美しい青色をしたカミキリ虫だそうで、表紙にもなっています。
ググったら確かに美しい。
福岡ハカセは、本業は生物学者で、狂牛病を取り扱った 『プリオン説はほんとうか?』や、動的均衡について書かれた『生物と無生物のあいだ』で有名ですが、文章も上手くて、
蝶への興味はやがてもっと硬質の美しさへの希求にとってかわる。あこがれたのはルリボシカミキリだった。小さなカミキリムシ。でもめったに採集できない。その青色は、どんな絵の具をもってしても描けないくらいあざやかで深く青い。こんな青は、フェルメールだって出すことができない。その青の上に散る斑点は真っ黒。高名な書家が、筆につややかな漆を含ませて一気に打ったような二列三段の見事な丸い点。大きく張り出した優美な触角にまで青色と黒色の互い違いの文様が並ぶ。私は息を殺してずっとその青を見つめつづけた。
って、科学者というより文筆家の域ですよね。生物学者はやはり観察力が半端じゃないので、表現力を伴うと恐ろしく魅力的な文になりますね。
それから、
生物の特徴は、実は、指揮者やリーダーがいないということである。ヒトの細胞は全部で六十兆個もあるけれど、どの細胞も全体の地図や構造を一切知らない。個々の細胞が絶えず連絡を取り合っているのはせいぜい自分の前後左右上下の細胞だけである。にもかかわらず全体としては組織だった統合がなされている。中央集権ではなく地方分権的な仕組みだという点がポイント。脳ですら、身体全体を鳥瞰的に見ているわけではなく、むしろ個々のニューロンは近隣のニューロンと情報を交換しているにすぎない。ローカルなグリッドが相互に連結するだけで、グローバルなシステムを作り上げる。つまりここには「部品」と呼ぶべきものはなく、ローカルは連続的に全体を構成する。このようなモデルは、生命の本質を探る上でとても重要なヒントとなる。
という文章。考えてみれば、DNA鑑定ができるということは、六十兆個の細胞には、すべて同じDNAが組み込まれているわけです。なのに、部分部分で全く違った形や機能を有し、さらにそれが80年位の人生で部分部分で継続して新しい細胞に置き換わっているのはすごい不思議なことだと思いました。
もちろん、分子生物学的にはその辺も解明されつつあるのでしょうが、神秘だよなぁと思います。
一時期、「企業のDNA」なんて言葉が流行り、また、兼子先生が日本型組織の良かった点として「向こう三軒両隣を大切にした」と仰っていましたが、そう考えると成功したトヨタなんて会社は大きな一つの生物なのかなと思いました。
[144]米山 髙範:『品質管理のはなし』,日科技連出版社,1969年.

1929年生まれの米山髙範氏は、東京工業大学の水野滋先生のもとで品質管理を学び、小西六写真工業で実践を積み、1994年にデミング賞本賞、1996年にWalter L. Hurd Executive Medal、1999年に勲三等旭日中綬章叙勲、ASQ Ishikawa Medal受賞という輝かしい経歴を持つ方です。
日本品質管理学会の会長にもなりましたし、日科技連の理事長も務めました。
そんなすごい人が、1964年に技術士を取った5年後の1969年、40歳の乗りにのった頃に書き上げたのがこの本です。
★★★
実は、JSTQBカンファレンスで講演することが決まったときに、「せっかく、海外の方もいらっしゃるイベントなんだからHAYST法のことを話すにしてもベースとして品質工学や日本的品質管理の話をいれたいなぁ」と思いました。
そこで、田口玄一を2冊と、石川馨と、そしてこの本を読みました。
そして、この本が一番じんとしみました。
★★★
この本の良いところの一つは、原点がわかるということです。
例えば、実験計画法。これは、フィッシャーがロザムステッドの農業試験場で小麦の生産をあげるための効率的な実験を考えたところからスタートしたと言われていますし、わたしもそう説明してきたのですが、、、。
たとえば、小麦の品種の中から最も収穫の多いものを選び出す実験をするために、小麦を植える面積を広げてゆきました。しかし、畑を広げれば広げるほど、土の性質とか日のあたり具合などがかわってきて、条件の違うものをゴチャマゼにしてしまう結果になります。しかも、たくさんの実験をやるためには長い時間がかかりますので、その間に天候がかわったり、作業者がかわったりして、しまいにはなにを調べているのかわからなくなってしまうのでした。
従来、たくさんの例を調べればなにかわかるという考え方があったのに、たくさんの例を調べるほど、実は正しい比較ができなくなることに気がついたのです。つまり、小麦の品種の良し悪しを見るには、小麦を植える畑の土質や日のあたり方といった環境条件の影響を、なんらかの方法でとり除かなくてはいけないと思いました。そこで彼は、小麦の収穫量のうち、たしかに小麦の品種がきいている部分と、畑の土質や日あたりが影響している部分とをわけられるようにすればよいと考えました。
私は、実験計画法の紹介の時に、「作物は収穫までに1年かかるので、毎年条件を変えるのではなく、畑を分割してそれぞれにうまい条件を振ってあげることで実験時間を短縮し、また、条件の振り方を工夫することでそれぞれの影響を解析できるようにしました」と説明してきましたが、それは本質ではなく、上に引用したように「小さい試料から結果を推測すること」を突きつめて考えていたところがフィッシャーの素晴らしいところなんだなぁと気づきました。
「品質管理がなぜ必要か」を原点から解きほぐしてくれます。
★★★
この本の二つ目に良い点は、とても平易な文章ということです。
先に引用したものもそうですが、大変読みやすい良い文章です。米山さんは落語が大好きだそうで、それも文章に反映されていて退屈しません。
また、数式は最小限で、それよりも実データを用いたグラフや表とユーモラスなイラストで理解を促す方法をとっています。
上記は、カメラの購入に対する市場調査で、「買うときになにいに気をつけますか、2つあげてください」というアンケート結果をまとめたものだそうです。こうして整理すると、“機能性能”と“価格”の組合せが断然多いことが一目瞭然です。
何かで使ってみたくなりました。
★★★
そして、この本の三つ目に良い点は、QCの本質を伝えているところです。
言葉にしてはこう書いてあります。
QCの本質は、“消費者の要求にこたえ、かつ、有用性のある商品を安定して供給する”ことでした。高い技術力による商品を開発するにしても、潜在需要を掘り起こすにしても、また、安定した品質をつくり出す管理システムを確立するにしても、それらの行動の基本を忘れてはなりません。
今一度、かみしめたい言葉ですね。。
[145]田村 泰彦:『トラブル未然防止のための知識の構造化』,日本規格協会,2008年.

本書のサブタイトルは、「SSMによる設計・計画の質を高める知識マネジメント」です。つまり、SSMについて書かれている本です。
SSMとは、「Stress-Strength Model:ストレス-ストレングスモデル」の略で不具合の発生メカニズムの知識を構造的に表現するモデルのことです。
★★★
筆者は、「トラブル情報データベースはなかなかうまく活用されていないことが多い」と言います。そして、その問題点を解決するためには、
トラブル情報自体の設計への再利用性を高め、設計者に必要な内容を提供できるように情報自体のもち方を工夫しなければならない。では、その工夫とは何であろうか──それは、知識の構造化である。
と言います。
また、再利用性についてFTAと比較して、こう書いています。
トラブル情報の整理に役立つ構造化知識表現モデルとしては、FT図が挙げられる。FT図は、FTAの結果として表現されるツリー図であり、トップ事象として取り上げられる望ましくない事象の原因系を把握するうえではわかりやすい。
しかし、FT図は、因果を分節で切り出すという考え方がない。つまり、トラブル発生メカニズムの一部を再利用可能な知識として切り出して活用するという知識の機動的な動きは難しい。また様々な危機に再利用可能な一般的なトラブルメカニズムの知識を整理したいと考えても、展開という性質上、事象の対象を明確に定義する方法がないため、知識の一般性を明確に表現することは困難である。
なるほど、トラブル情報データベースから、再利用可能な知識データベースを構築するためには、「トラブル発生メカニズム(因果関係)を分節として整理する」必要があるのですね。
★★★
それでは、SSMの構造化知識表現モデルは、【定義属性】、【制御属性】、【ストレングス】、【ストレス】、【不具合モード】の5つの要素から成り立っています。
【定義属性】とは、不具合モードの発生メカニズムの知識を適用する対象・アイテムの範囲を定義する属性のことです。
「どこで(定義属性で)、何が起きるか(不具合モードが起きる)」ということです。この定義属性を細かく定義してしまうと、「トラブル発生メカニズム」の適用範囲が狭くなります。したがって、定義属性はどこまで一般化できるかについて考え、広く定義する必要があります。
【制御属性】には、【定義属性】に対してどんなパラメータを選択(制御)することができるのかについて書きます。【不具合モード】が起ったポイント、逆に言うと起こらなくするために制御できるもののことです。
【ストレングス】は、【不具合モード】発生防止のために本来設計上確保すべき総合的な耐性や狙いの不足・不備のことです。簡単に言うと強度です。
【ストレス】は、【不具合モード】の発生要因となる制約条件・異常入力・制御できない条件のことです。簡単に言うと負荷です。
【不具合モード】は、説明するまでもなく不具合の内容です。
つまり、トラブル情報データベースのデータを、【定義属性】、【制御属性】、【ストレングス】、【ストレス】、【不具合モード】の5つのアイテムで構造化することで再利用可能な知識になるわけです。
文章で書くと、
【定義属性(トラブル知識を再利用する対象)】によって示される対象において、【制御属性(設計パラメータ要因)】の【ストレングス(耐性・狙いのまずさ)】の大きさが、【ストレス(運転条件・異常入力等)】に負けたため【不具合モード(望ましくない事象発生)】となった。
というようにまとめることができます(これを「相対的因果メカニズム」と呼び、他にも「絶対的因果メカニズム」と「断片的因果メカニズム」があります)。
★★★
さて、ここまで読んでソフトウェアテスト関係のみなさんは、バグ情報データベースから、SSMの考え方をもちいて、ソフトウェアにおけるバグ知識データベースが構築できるのかどうかが気になったのではないかと思います。
【定義属性】と【不具合モード】の考え方(因果関係を再利用しやすい単位で切り出すこと)はそのまま使えると思います。
しかし、不具合モードの発生要因である【制御属性】、【ストレングス】、【ストレス】については、あてはまりません。
細川さんがバグ手帳にバグを記録していると言っていたそうですが、きっと散文的ではなく記録のポイントがあると思うんですよね。そういったものを持ち寄って不具合モードの発生要因の整理の仕方を考えたいと思っています。
[146]Scott Berkun (酒匂 寛 (翻訳) ):『パブリックスピーカーの告白』,オライリージャパン,2010年.

社内教育などを含めるとなんだかんだで、月に2回位は演台に立ってプレゼンテーションをしているのですが、いつまでたっても慣れないし上手くならない。
そんな私のために書いてくれたような本です。
★★★
著者のScott Berkunは、『イノベーションの神話』、『アート・オブ・プロジェクトマネジメント』を書いた人です。
マイクロソフトで、Internet Explorerの1.0から5.0のプログラム・マネジメントの担当をされて、2003年に独立したそうです。
その後、様々な大イベントの基調講演をしていらっしゃるので(私は上の2冊もまだ読んでいませんし、講演も聞いたことがありませんが)すごい人なんだと思います。
★★★
本書には、プレゼンテーションを実施するにあたっての心得や注意点、そして有益なアドバイスがたくさん詰まっています。
ただし、見栄えの良いの資料の作り方については載っていません。
そちらは、(本書でも推薦されている)『プレゼンテーション Zen』やNancy Duarteの『Slide:Ology』を読まれるのが良いと思います。
本書のアドバイスは例えばこのようなものです。
あなたとケネディ大統領やキング牧師との違いは話す能力にあるのではありません。私たちが皆毎日何百回と使っている技術にあるのではなく、考える能力、そして、おおまかな考えを明確な考えに磨き上げる能力にあるということです。主張をする、協調を与える、ほかの人に感情を伝える、これらの行動には、話すという行動のずっと以前に、まず考えることが要求されます。たくさん、たくさん、考えることが要求されます。しかし、考えている部分は見えません。結局、考えているところは見えていてもあまりおもしろいものではありません。見えるのは話すところだけです。そのために、考えが魔法のように自然に出てきたように見えるのです。
また、もっと具体的で役に立つアドバイスもたくさん載っています。私がハッっとしたのは次のアドバイスでした。
話し手が聞き手に「いまの私の話に何か質問は?」と尋ねるのは愚かです。この質問は脅迫的に響きます。話し手が聞き手に自分の権威に挑戦してみろと言っているように聞こえるのです。これは多くの人がやりたいと思っていることではありません。その代わりに、もっと前向きで対話的なものにしましょう。例えばこう言いましょう「もっと詳しく説明してほしい部分はありませんか?」
★★★
会場、マイク、確認モニター、演台、カウントダウンタイマー等々の設備やツール、そして困った客への対応についても十分なアドバイスがあります。
特に、スライドをめくるリモコンについての重要性は私も(今年になってから使い始めたのですが)同感です。
この本で勧めているリモコンは、"Logitech Cordless Presenter"というものでしたが、日本では販売していないようです。
私が使っているのは、レーザーポインター付きの「LOGICOOL プロフェッショナルプレゼンター」ですが、本当にプレゼンのやり方が変わります。電池は通常の使い方で1日の研修なら持ちます(2日は持ちません)。タイマー機能も使い始めるとなくてはならないものになります。
何がそんなに変わるのかというと、前を向きながらプレゼンし続けられるということです。スライド切り替えをキーボードで行うと目が下に行ってしまうんですね。それと、会場によっては演台の前にでて話す必要があるレイアウトのところもあるのですが、そんなときにリモートから操作できるリモコンは本当に便利です。
ところで、本書ではレーザーポインターや指示棒の話は一切出てきません。
ちょっと不思議な気がしたのですが、近ごろのプレゼン資料は「ビジュアルで右脳に訴えるものを、スピーチはストーリーになっていて左脳に訴えるようにする」が主流だから、ポインター自体が不要なのかもしれません。
不要というよりも、むしろ、ポインターを使うために振り返ること(観客に背を向けること)が有害なのかもしれません。
ポインターの使用は必要最小限にしようと思いました(会社の運営会などの資料はビジーなのでそうもいかないのですが……)。
★★★
そして、「告白」というタイトルの通り、真摯に実体験をもとに語られています。こんなにすごいスピーカーも同じようなことにクヨクヨしたり悩んだり、失敗したりしているんだと思うと気が楽になります。
ということで、プレゼンする機会が多い方、おすすめですよー。
翻訳も、酒匂寛さんで、読みやすいです。
[147]勝間 和代、堀江 貴文、西村 博之:『
そこまで言うか!』,青志社,2010年.
2010/5/3の、BSジャパンの「デキビジ」(できるビジネスパーソンの略)という勝間 和代の番組で、ゲストにひろゆきを呼んだところ、勝間対ひろゆきの構図になり、勝間が
ボコボコにされたということで、ネット上で話題になりました。
本書は、あの対談は睡眠不足でお互い機嫌が悪かったということで、ホリエモンが間に入り仕切りなおしましょうと言うことで行われた鼎談(2010/5/20と7/12に合計7時間行われた)のノーカット版だそうです。
3人とも世の中のことを勉強していて、知識豊富ですし、頭もとてもよい人たちなので面白い内容になっています。
また、勝間さんの意外な一面が見られます。たとえば、
西村 勝間さんは、自由のために使うお金はあって、手元にも結構なお金があるわけじゃないですか。そうしたら、もう働かなくても自由は手に入っているわけじゃないですか。
勝間 なので、今は働きたい仕事だけやっているんです。
西村 勝間さん、何かの番組でコスプレしてましたけど、コスプレをする仕事も働きたい仕事だったんですか?(笑)
勝間 いや、コスプレがしたかったのではなくて、番組ではデフレの話をしたくて、その部分を見てほしかったんですよ。でも、「コスプレをやると視聴率が上がって、デフレの話も聞いてくれるよ」と言われたので、そうかなやってみようかなって……。
西村 勝間さん、それ完全に騙されていますよ(笑)。
勝間 そうなんです。やってみたら、みんなからデフレのデの字も出なくて、コスプレの話しかしなかったんです(笑)。
コスプレした姿を見せたいという願望もあったのだと思うけれど、それよりもデフレについて多くの人に自分の意見を聞いてもらいたいと思ったのでしょうね。
自分を売る戦略とかあまり考えなくて、(いやものすごく考えていてそれに則ってコスプレしたのかもしれませんが……)純粋で真っ直ぐな感じがいいですね。他のいわゆる勝間本を読んでも見えてこない部分だと思います。
★★★
3人の考え方は基本的に前向きで、本質をついているのであまり対立構造になっていません。それでよいことをたくさん言っています。たとえば、
勝間 でも、日本はものすごい不公正な社会ではなく、普通に努力すれば着実にステップアップできるので、単純に淡々とステップアップをしていけばいいんじゃないか、と考えてしまうんですけど。
西村 何に対して努力すればいいのか理解できないんじゃないですかね?
堀江 コンビニのバイトからでもステップアップできるじゃん。店長になってもいいし、コンビニの仕組みを覚えることも、いいことだと思う。賞味期限切れのロス率や万引き率、店員が不正をする率とかを考えたら、コンビニがいかに儲からないシステム化を理解できるわけだし。
西村 日本の教育というのは、「与えられた中から選ぶ」というものではなく、「与えられたものをこなす」ということしかやっていない。だから、いざ社会に出ても、自分はどういう情報を得るべきで、どういうスキルを磨くべきなのか、の正解を誰も教えてくれない。すると、とりあえず言われた通り、レジ打ちや商品陳列をして時間が過ぎていってしまうんだと思いますよ。
こういう本当に大切なことが生き生きとしたやり取りの中で語られています。
もちろん、3人は3人とも別の個性を持っているので考え方の違いを追うことも面白いです。
私は、ホリエモンの考え方に近かったのが意外でした(笑)。
[148]久保田 洋志:『日常管理の基本と実践』,日本規格協会,2008年.

JSQC選書のVol.2です(Vol.1が『Q-Japan』、Vol.4が『トラブル未然防止のための知識の構造化』です)。
本書のサブタイトルは、「日常やるべきことをきっちり実施する 」です。
★★★
TQMのいうところの日常管理がわかる本です。
概念的には、次の2枚の図が大切と思いました。
1枚目は、組織における活動をシステムとしてみなした図です。
先日、SQiP研究会の特別講演で安達さんも仰っていましたが、活動をシステムとして捉えて整理するというのは案外役に立ちます。
この図でいえば、「目標追求」から「入力」「プロセス」「出力」に矢印が引かれているところが大切で、あぁ、日常管理の基本は「価値創造の目標追求」であったかと再認識させてくれます。
2枚目も、パッっと見ただけで、方針管理と日常管理が相互補完関係にあることが読み取れます。また、方針管理とPDCA(Plan-Do-Check-Act)、日常管理とSDCA(Standard-Do-Check-Act)の関係性も見て取れます。
私は、言葉ではなく、図で理解しておくことを心がけているのですが、そういった点でよい図が多い本でした。
★★★
それから、本書の引用・参考文献の22に「QCサークル活動の活性化に向けてー 『100%良品主義実現への挑戦』」というウェブページ(トヨタ自動車株式会社 取締役 佐々木真一氏の発表)がリストされていたのですが、短いけど深イイことが書いてありました。
特に、トヨタの自工程完結の定義が良いです。
自工程完結を一言で言うと、「作業者が作業しているとき、又は完了した時、作業の結果の良否が判ること」である。
*具体的には下記の4点である。
①作業者
作業者が自分の工程に関する知識と技能に十分な教育訓練を受け、自らの作業や設備、工具さらに作業の対象となる製品の異常・正常の判断が正確に出来ること。
②製品
製品が正しく加工されなければ、明らかに異常と分かる構造になっている。(または正常に作業が完了した事が判る)及び、精度が基準・規格の範囲内にあること。
③設備・治工具
その設備、治工具を使用した際の加工・組付け精度および信頼度が所期の狙いに整合していること。
④工程設計
誤品・欠品・工程飛びなど、作業者の錯誤を誘発する要素の有無、複雑さの度合いが評価の対象となり、作業者の錯誤を誘発しない工程設計になっていること。
最初はへぇって思っただけだったのですが、ちょっと気になったので何度か読み返しているうちに「このMECEすごいな色々なところに使える!」って思いました。
基本的なことを中心に丁寧に記述されている良書と思います。
本書は、筆者が京都大学大学院人間・環境学研究科に提出した博士号論文に加筆したもので、南方熊楠が、真言僧・土宜法龍宛てに送った書簡を中心に「事の学」について筆者が考察したものになっています。
南方熊楠について興味があって買った一冊目です。
★★★
「事の学」とは、「物事心」の関係から世界を理解しようという南方熊楠の研究アプローチのことです。南方熊楠は、物、事、心を次のように考えているようです。
物: 物質そのもの
事: 精神が物質を捉えようとする過程で生まれてくる現象
心: 自分自身の精神
そして、表紙の絵(べん図)にあるように物と心の重なったところに事が生じるというのです。
つまり、自然科学は専ら、物を単独で取り扱い、そこに各人の心が入ることを否定してきた(河合隼雄の言葉でいえば「自然科学は『私』と他を切り離すことによって成立した学である」)のですが、それだけでは世界は理解できないだろうというのが南方熊楠の主張になります。
私は、『ソフトウェアテスト技法ドリル』で、テスト対象は構造と振る舞い(モノとコト)でできていると書きましたが、振る舞いというのは、心がソフトウェアそのものに重なった時に生まれるわけですから「物事心」の考え方に非常に納得がいきました。
★★★
その他にも、「因果」と「縁起」の関係についての記述も面白かったです。
「因果」のことを南方熊楠は「筋道」と呼び、実際にマインドマップのように線で結ぶのですが、因-果が生起している最中に、別の因果系列が割り込んでくる場合、それを「縁」と呼びその2つの因果関係が影響しあう時は「起」となると書いています。
逆に言うと「縁」を「起」に変えていくことが大切なんですね。それが発想の広がりから新しいものを生み出すことなんだと思います。
福本 伸行の表紙につられて買ったのですが、福本 伸行×堀江 貴文の対談が載っていたのは思わぬ収穫でした。本文よりも価値があるかもしれません。
本書は、38歳を迎える堀江 貴文が、25歳、28歳、32歳、35歳、38歳の“君”に宛てたアドバイスという構成になっています。
少し前に、「私は、ホリエモンの考え方に近かったのが意外でした(笑)。」と書いたのですが、本書でも「そうだよな」と思うところが多くありました。
また、「それはちょっと違うと思うよ」というところも。
たとえば、ライブドア事件で最後まで頭を下げなかった理由についてこんなことを書いています。
いずれにしろ、あの場面で頭をさげなかったことで、僕は自分が築き上げた会社も社会的地位もごっそり失ってしまったわけだが、まったく後悔はしていない。
皮膚感覚で嫌だということを、受け入れてしまった後の後悔は、何億円稼いだって拭えるものではないだろう。
「大人になれ。後でいい思いをさせてやるから」という甘い誘惑で、オヤジたちは若者から「嫌」の感覚を奪っていく。これはとても危険な洗脳だと思う。
皮膚感覚で嫌なものは、絶対に断るべきだ。
複雑な時代を生きていても、そこだけはシンプルであるべきではないか。
「まったく後悔していない」というのは恐らく嘘だろうと思います。
だって、もしそうなら、気にもしていないのでわざわざ書かないから。そうではなく、「後悔しながらも小利口にならず頭を下げなかった自分が好き」というのが本音だと思います。
実は、私もそんな人生です(笑)。
矜持というとかっこよすぎるけど、譲れないところは損するとわかっていてもねっってところはあります。
そんなホリエモンに共感しつつも、一方で「何億円稼いだって」に代表される拝金主義や、モテ至上主義に対しては、そういう感覚は無いなぁと思います。
★★★
この本では、何度も「ためらわずに、昔の仲間を切り捨ててきたこと」に対する自己正当化が語られます。それは過去の具体例でも語られるし「自分には包容力が無い」という自己分析でも語られます。
ここが、語られているところが本書の一番面白いところだと思いました。
自分が持っているパフォーマンスを最大限に生かすことこそが天命と考えている一方で、少し離れたところから自分を見つめている目を持っているところが素晴らしいと思いました。
その他にも、「世の中の構造を見抜け」、「情報を持った者が勝つ」、「やりたいことをはっきりと持て」、「思考停止するな」、「努力しろ」といったメッセージがストレートに伝わってきます。
ということで、「近ごろオヤジになりかけかも!?」と感じている人は何か得るものがあるかもしれません。
[151]圓川 隆夫:『我が国文化と品質』,日本規格協会,2009年.

圓川 隆夫は、東京工業大学の教授で、日本品質管理学会の会長を務めた人です。また、先日の(2010年度の)「デミング賞本賞」に選ばれました。
★★★
「品質を上げるためにはお金が必要」というのは、一般的な意味で常識ですが、TQMの人たちは時に「品質とコストはトレードオフの関係にない」とか、さらに進んで「品質を上げるとコストが下がる」と言います。
私もたまにプレゼンで言うことがあるのですが、言葉で説明することが多く今一つ真意が伝わっていないんじゃないかなと心配だったのですが、本書に良い図がありましたので紹介します。
今後は、こちらを引用させていただこうかなと思っています。

“質とコストはトレードオフ”という考えは決して間違っていない。図1.2は、横軸にコスト(右に行くほど低コスト)、縦軸に質(上に行くほど高品質)をとり、実線の曲線は、フロンティアと呼ばれる現状の実力で実現可能な質とコスト水準の組合せを示したものである。このフロンティア曲線上のある点Aから、高品質に向けて左に移動すれば必然的に高コストになり、低コストに向けて右にシフトすれば質の低下を招く。すなわち、“質とコストはトレードオフ”の関係にあると言える。
ところが、技術革新や組織的改善努力によって、このフロンティア曲線を右側にシフト(一点鎖線)できればどうなるであろうか。図中のブロック矢印で示すようにAからA'(点線の矢印の範囲内)への移動は、高品質化とともに低コスト化も同時に実現される。これこそが“質をよくすればコストも下がる”という我が国質管理のいうところである。すなわち、“質とコストはトレードオフ”は短期的には正しくても、図1.1の時間軸を右に進め、中長期的に継続的な改善を積み重ねる場合には正しくなく、オペレーションズマネジメント上の競争優位の鍵となる“質をよくすればコストも下がる”世界が成立してくるのである。
どうでしょう? 私は、この図があるだけでずっと理解が進んだような気がしました。
★★★
本書では、また、「ガラパゴスかと世界同一品質追求」というタイトルで、グローバル市場で日本はどうやって品質を武器に戦っていけばよいのかの指針を示しています。
1990年ごろから、我が国製造業の海外進出やグローバル化が進展するにつれ“世界同一水準”ということが喧伝された。しかしながら、今グローバルな市場ニーズとコストを考慮した“戦略的質・機能”という考え方も必要ではないか。その一方で、たとえば同じ製品の中でも安全、特に環境に関しては、我が国製造業が得意な、CO2ゼロ、環境負荷ゼロを目指した飽くなき高品質・高信頼性を“世界同一水準”で追及するというように、質のあり方をターゲットに層別して考える必要が、今求められている。
ということで、これまでの日本の歩みを振り返り、今後について品質を軸にどうやって戦略を立てていったらよいのかを考えるうえで勉強になりました。
[152]Richard E. Nisbett(村本 由紀子(翻訳) ):『木を見る西洋人 森を見る東洋人』,ダイヤモンド社,2004年.

本書は、西洋人と東洋人のものの見方や考え方の違いについて書かれています。
増田さんから紹介してもらった本です。ありがとうございます。
西洋人と東洋人の違いは端的に言えばタイトルの通りで、一番目立つ対象物に焦点を当てて分析的に見るのが西洋人で、全体の関連性に常に気を配り包括的に見るのが東洋人という結論でした。

上の絵は、本書に載っていた「ターゲット」がどちらのグループに近いと思いますかという問題です。
西洋人(被験者はヨーロッパ系アメリカ人)はのほとんどは右側のターゲット2を選び、東洋人(被験者は韓国人)のほとんどは左側のターゲット1を選んだそうです。
私も迷わず、ターゲット1でしょうと思ったのですが、西洋人は各グループの絵を分析し「まっすぐな茎をもっている」という共通規則を発見してターゲット2を選ぶんだそうです。
★★★
それから、西洋の言語では名詞が良く用いられ、東洋の言語では動詞が活用されるとの指摘がありました。
名詞は分析に役立ち、動詞は関係性が強調されるわけです。
先日、「テストアーキテクチャーを、クラス図のような静的関係を描くのは難しいけど、同じことをプロセスのような仕事の流れだと把握できる」とみきおさんが言っていたけど、西洋人は名詞で捉え分析することが得意で、東洋人は動詞で捉え関係性を記述するのが得意なこととつながっているのかもしれないと思いました。
つまり、西洋人なら対象をコンテキストから切り離して捉えることができて、対象の性質を抑えることで世界をコントロールしていくのに対して、東洋人はコンテキストこそが大切で部分ではなく全体で抑えるべきだという考えなのかもしれません。
また、名詞にしても英語のIに相当する言葉が日本語にはたくさんあるのは、相手との関係における「私」を記述したいからという見方ができるとのことです。
これも、木(この場合は私)を見る西洋人、森(相手との関係性)を見る東洋人ですね。
こう考えていくと、西洋人はソフトウェア開発者に向いていて、東洋人はテストエンジニアに向いているような気もしてきました。
もちろん、ステレオタイプで捉えることの危険さはあるにせよ。
[153]唐津 一:『企業をのばす品質管理』,講談社,1966年.

1950年に田口玄一が、逓信省電気試験所に入り、当時課長職であった茅野健(オペレーションズ・リサーチの権威)らとともに実験計画法を学び、1955年に西堀榮三郎が迎え入れられ西堀特別研究室が設置され、翌年、西堀榮三郎は南極へ旅立ち西堀特別研究室は解散しました。
そんな時代に、著者の唐津 一も西堀特別研究室に在籍していたようです。
唐津 一は、1919年1月9日生(現在、91歳)ですから、田口玄一(1924年1月1日:現在、86歳)より5歳年上です。西堀特別研究室では、両社は係長であり(茅野の)兄弟弟子の関係にあったようです。また、本書には西堀榮三郎のおともをして工場に指導に行ったとも書かれています。
その後、茅野健に引っ張られる形で唐津は、松下通信工業に移りました。
そういった人ですから、QCを創ってきた人の一人と言ってよいと思います。
1981年にデミング本賞を受賞されています。
★★★
さて、本書はそんな唐津がブルーバックスでQCの初歩をわかりやすく伝えている本です。
品質管理というのははじめから良い品物だけをつくる方法です。
という言葉に唐津の思いがあらわれているように思います。
このころには、まだ、QC7つ道具にはまとまっていなかったようで、
・パレート分析
・特性要因図
・層別
・相関図とカード分類法
・符号検定
・時系列グラフ
・管理図
・x-R管理図
・抜取検査
の9つが紹介されていました。
そして、その前の理論の章として統計や分散分析、直交配列表などが紹介されていました。
★★★
著者は工場へ指導に行ったときに3つの質問をしたそうです。
質問1: 品質について一番よく知っていて、しかも品質について責任が取れる人に会わせてください。
質問2: 先週一週間のうちで、一番大きな不良事故、二番目に大きな不良事故は何でしたか? 五番目まであげてください。
質問3: では、この一番大きな事故、これを知ったのはいつで、どうやって知りましたか? 文書ですか、電話ですか? それを聞いてあなたはどうされました? 会議をやった? それなら議事録を見せてください。
大抵の工場ではこの質問に答えられる責任者はいないそうです。そして、この3つの質問に答えられることが品質管理がきちんとできているということで、それさえちゃんとしていれば不良品はなくなっていくとのことです。
品質管理は名の示す通り、管理、つまり運用の一つの方法です。しかしいまいった三つのことを真面目にやろうとすれば、組織もキチンとしなくてはできませんし、標準もいるし、また管理図も使いたくなるのです。しかしだからといって、形をととのえてもうまくいかどうかは別の事なのです。
この文章にたどり着いて、この本が出版された44年前の教訓は今も生きていて本質の一つなんだなぁと思いました。
[154]中原 淳:『職場学習論』,東京大学出版会,2010年.

職場で「人は、どういった支援を受けて成長するのか」についての研究論文のような本です。
結論としては、業務支援、内省支援、精神支援を受けていて、それぞれが効果があることが示されています。それぞれの支援とは、
◆ 業務支援
自分にはない専門的知識・スキルを提供してくれる
仕事の相談にのってくれる
仕事に必要な情報を提供してくれる
仕事上の必要な他部門との調整をしてくれる
自分の目標、手本となっている
自律的に働けるよう、まかせてくれる
◆ 内省支援
自分について客観的な意見を言ってくれる
自分自身を振り返る機会を与えてくれる
自分にない新たな視点を与えてくれる
◆ 精神支援
精神的な安らぎを与えてくれる
仕事の息抜きになる
心の支えになってくれる
プライベートな相談にのってくれる
楽しく仕事ができる雰囲気を与えてくれる
このアンケートには富士ゼロックス総合研究所(FXLI)との共同研究が含まれているとのことです。
本書を論文として見た場合、かなりの完成度だと思います。
また、本として見た場合も、素人でも読みやすい良書と思います。
けど、何か現実と合っていないんですよねぇ。これだけじゃないというか。
確かに、アンケートで聞かれたらこう答えると思うのだけれど、支援は「パーソナリティとの組合せ」で効いてくるものだと思うから、一般論として正しくても個別のケースにはなかなか合致しないと言いますか……。
鵜呑みにさえしなければ、面白い本ではあるし読む価値は大と思います。
[155]赤間 世紀:『オントロジーがわかる本』,工学社,2010年.

途中まで読んでわからなかったので、放ってあった本です。
読み進める気になったのは、Twitterでのやり取りからです。
2010年12月23日に、Twitterで、@kz_suzukiさんが、
ソフトウェア工学にも応用されつつあるといい、設計に役立つかと思って本を読み始めた「オントロジー」の本。形式論理学をさらに抽象的にした感じで、読むのが辛すぎる。オントロジー自体そもそも知らなかったんだけど、関係者には一般的な分野なんだろうか。
と書いていたのを読んで、頭の中でNGTという単語が閃いて、忘れないように、
NGTはオントロジーだよね。
って書き込みました。これが本書を読み返すきっかけです。
★★★
ここ一年位、智美塾でずっと「テストアーキテクチャ」ってなんだろう??というテーマを議論しています。
それ以前から、にしさんの講演(やウェブ上のプレゼン資料)などから「テストアーキテクチャは、NGTでは、テスト観点をツリー構造に展開・整理し、その後、テスト観点を取捨選択・重要度付けなどをした上でグルーピングする作業」ということは聞いていました。
智美塾は、ゼロベースで考え直すというのが特徴で良いところだと思っています。だから、ひょっとしたら上に書いたNGTも進化する可能性があるし、自分のHAYST法で〃なんとなく〃行っている作業の意図が明確になるかもしれないという面白さがあります。
で、アーキテクチャなので、構成要素とそれらの関係性を明らかにする必要があるのですが、NGTや塾生が書いてきたツリー図を見ると、最終的に丸で囲った部分が出てきたり、複数枚の図が必要だったりしています。
また、ゆもつよや、FV表といった表形式だと表現の制約が厳しいのでテスト対象ごとにアーキテクチャを考えるというよりも、ゆもつよや、FV表が汎用的なテストアーキテクチャといった感じでした。
★★★
ソフトウェアテストの構造は、ツリーじゃなくて、ネットワークなのかと思って、『図の体系』といった表現方法の本も読んでみたのですが、どうも表現だけでは限界があり、美しく描けないのです。
で、@kz_suzukiさんのツイートに話は戻るのですが、あれを読んだ時に私は「OWLとかの話もあるけど、80年代に流行ったPrologで書いた知識ベースの続きだよなぁ」って思ったんですね。
そして、「あぁ、NGTは知識ベースなんだからオントロジーだ」とつながったのです。
★★★
「言葉」は場面によって使われ方が変わりますよね。それは、たくさんの意味を持っているからです。
だったら「言葉」と「意味」をセットにしてコンピュータで取り扱えるようにしようというのが(最近の……といっても20年位前からの)「オントロジー」や「セマンティックWeb」の流れなんだと思っています。
そのために必要となる技術が、「概念グラフ(知識の表現方法)」「フォーマル・オントロジー(数学的理論)」「記述論理(知識の取り扱い方)」です。
そして、その実装の一つがOWL(オントロジー言語)という関係です。
★★★
本書には、オントロジーの応用例として「テスト」や「バグ」の話も載っています。
「テスト」において重要な要因の1つは、どのようなケースを設定するかという問題である。もちろん、プログラムのすべての機能を確認しなくてはならない。
「テスト」を行うべきケースは膨大となるが、重要なものと、そうでないものもある。ケースの重要性は、プログラム構造だけでなくアプリケーション分野にも依存する。
「オントロジー」は、特に「テスト」の基本的なケースの認識に役に立つ。通常、プログラムの基本的なケースはその構造に依存するもので、プログラム構造の関連性から同定できる。
さらに、ケースの「階層化」によって「テスト」の効率化もできると考えられる。たとえば、あるケースが他のケースの「サブクラス」として記述可能ならば、一部のケースの「テスト」は簡略化できる。
「障害」の多くは、プログラムに「バグ」があるために発生する。よって、障害が発見されたら、原因を究明して、「バグ」を除去せねばならない。一般的には、「バグ」の情報を文書化する。
ここで、「障害」の情報についての「オントロジー」によって、「バグ」の種類、原因、影響などをまとめることができ、その後の対応に役に立つ。
テストの構成要素や、バグをオントロジーによって整理すると取り扱いやすくなる(かもしれない)といったイメージですね。
★★★
といったことが書かれている本なのですが、書名の『オントロジーがわかる本』というのはかなり疑問で、「この本を読んでもオントロジーはさっぱりわからない」という感想を持つのが普通だと思います。
それは、広範囲にわたって解説しているのでそれぞれが浅くなっているからです。
だから、お勧めしません。かといって、他に読みやすい本はまだ見つかっていないのですけどね。
# Twitterに書いた、「上位オントロジー」の論文など、ウェブの情報の方が分かりやすいです。
[156]和田 卓人 (監修), Kevlin Henney (編集), 夏目 大 (翻訳):『プログラマが知るべき97のこと』,オライリージャパン,2010年.

書名から「き97のこ」の部分をとりだして、「97きのこ本」という愛称がついています。
そのルールに基づくなら姉妹本の『ソフトウェアアーキテクトが知るべき97のこと』も「97きのこ本」になるのですが、こちらは特にそのようには呼ばれてはいないようです。
原著の73人のプログラマによる97本のエッセイに加えて、日本人プログラマ8人(小飼弾、関将俊、舘野祐一、まつもとゆきひろ、宮川達彦、森田創、吉岡弘隆、和田卓人)による書き下ろしの10本のエッセイが追加され合計107本のエッセイ集になっています。
エッセイ1本は2ページのものが中心なので電車の中などでも気軽に読むことができます。
テストを話題にしたものも、タイトルだけでも、8本あります(本書中にある分類では14本になっていました)。
テスト担当者はプログラマの友人
偶然の仕様ではなく本物の仕様のためのテストを書く
テストは夜間と週末に
テストのないソフトウェア開発はあり得ない
プログラマとテスターが協力してできること
コードを見る人のためにテストを書く
テストは正確に、具体的に
不具合にテストを書いて立ち向かう
全体的にそれぞれのプログラマ達の経験からのアドバイスが多く好感が持てます。
★★★
本書を読んで初めて知った言葉に「フロー」いうものがあります。
次の文章は、『95 ペアプログラミングと「フロー」』の出だしです。
何かに完全に没頭している時──夢中で何かをしていて、時間が経つのも忘れてしまっているとき──それはきっと人間にとって幸せな状態です。その状態は「フロー状態」と呼ばれます。
「フロー状態」にすっと入っていけること、また、「フロー状態」を維持できることができたら品質や生産性は格段に上がると思います。
自分自身の事を振り返っても、会社でテストツールのプログラムを書いていたときは、誰もいないときか、みんなが帰った夜中に書いていました。
本、論文、原稿、プレゼン資料を作るときにも、10時間のうち、8時間は題材を考えていたり、資料を集めていたり、テキストエディタに目次と構成をタブで作っていたりして、実際に書くのは2時間というパターンが多いです。その集中して何かをしている時が「フロー状態」なんだろうなと思います。
ソフトウェアの見積りが難しいのも「フロー状態」の自分で工数を見積もってしまうからかなぁと思いました。
ところで、私の場合、「フロー状態」に入るために、
・ 甘いコーヒーを飲み、チョコレートを食べる
・ 机の上を片付ける
・ メールを読み、返信し尽くす
という儀式が必要です。こういった儀式を集めたら面白かもしれませんね。

# こちらは本書を監修された和田卓人さんに頂いたサインです。和田さんのエッセイもいいですよ。
[157]WACATE(編集):『Software Testing ManiaX - vol.4』,WACATE,2010年.

まずは、全体的な話です。今回、134ページと少々薄めです。
vol.1 126ページ
vol.2 150ページ
vol.3 218ページ
なので、vol.3が特別号だったということですね。内容はかなり充実していました。
それでは、順番に感想などー。
★★★
1. 湯本 剛さん
タイトルは、「テストマネジメントツールは本当に必要か?」です。
テストマネジメントツールを提供する側に回った筆者が改めて語る「テストマネジメントツールの必要性」の話です。
テストマネジメントツールというのは、テストマネジメントを支援するツールなので、テストマネジメントの意味が違ってしまうと、テストマネジメントツールの良さとか必要性はわからないのではないか?
というトップダウンアプローチで語っています(そこに至った思考プロセスも赤裸々に語られていますので参考になると思います)。
確かにその通りです。
この言葉に触発されて思い出したことがあります。それは、「アメリカ人は、ツールが提供するであろう価値を信じて仕事のやり方を変えることを好む。日本人は、今やっている仕事を楽にするツールを好む」という言葉です。
HAYST法は、多くの現場では仕事のやり方を変えてもらわないと適用できません。
だから、今期も8回にわたってA社へ行って、仕事のやり方を変える支援をしています。
恐らく、ゆもつよメソッドも同じ前者なんじゃないかと思います。
ところが、みきおさんのアプローチは後者です。社内に展開しようとすると前者は超大変ですし後者のアプローチで現業を崩さずに仕事のやり方を改善してもらうことで十分良い効果が得られることも多いからです。私も、社内については苦労しています。
で、話は戻ってテストマネジメントツールですが、湯本さんが本質に立ち返ってテストマネジメントという仕事を良い方向に変えようとしている点がとてもうれしかったし、頼もしかったです。
仕事のやり方を変える、まずは、「テストマネジメントのあるべき姿とはどういったものか。どんなアクティビティがあって、それらは何を支援するのか」について見定めること。
ちょっと時間はかかるかもしれないけど、2011年にふさわしいテーマと思いました。
2. 渡辺 亮さん
タイトルは、「炎上について学びましょう」です。
池上 彰っぽいスタイルで、炎上について解説しています。
プレート境界に蓄積した歪が臨界点に達し、そのエネルギーが解放されたときに地震が起こるのと同様に、「境界におけるある種の力のぶつかり合いで炎上が発生する」と、炎上のメカニズムを説明しています。
気象庁炎上階級は、『組込みソフトウェア開発向け品質作り込みガイド』の「システム障害影響評価スケール ST-SEISMIC」のパロディかな。楽しく読めました。
もちろん楽しいだけではなく、たとえば、「火の始末」(現象を消すことだけ)ではなく「非の始末」(原因に立ち返って対応すること)と書いているように、示唆のある深い文章であることも指摘しておきます。
3. 野中 誠さん
タイトルは、「一般化線形モデルを用いたソフトウェア欠陥予測の試行」です。
ソフトウェア欠陥数の予測には、よく正規分布が使われます。
ところが、正規分布はもともとアナログデータの分布です。したがって、欠陥数のようなディジタルデータでしかも少数値の予測について正規分布をあてはめるには、不適切なモデルです。
そこで、「一般化線形モデル」を用いようという提案です。
筆者の知る範囲では、ソフトウェア欠陥予測にこれらの一般化線形モデルを適用した研究や事例は少なくとも国内ではほとんど報告されていない。
と書いてあるのですが、えぇーって感じです。
というのは、私は、大学の時に物理科だったのですが、「放射線の実験などでその減衰を予測するためにはディジタル値の分布をあてはめないとだめ。何故なら、放射能は量子の飛び出しなのでディジタル値だから」と粟屋 隆先生から口酸っぱく言われていたのです。
その辺のことは、『データ解析―アナログとディジタル』という本に詳しく平易に書かれていて、私も、その本を元に、Fortranでデータ解析用の最小二乗法(←アナログデータのフィッティングです)に代わるプログラムを書かされました。
それは、大学2年生(1982年)の事だったので、30年後に同じ主張の話を聞くなんてーという感じです。
まぁ、アナログかディジタルかの違いによる予測精度の問題よりももっと根本的な問題(ソフトウェア欠陥予測について統計として取り扱える部分がどれほど大きいのか)があるんですけどね。
4. 二上 貴夫さん
タイトルは、「モノの設計視点から高品質化を考える」です。
讃岐うどんや、ジェット旅客機の主翼は、層を重ねることでその強度を作り出していますが、ソフトウェア工学では、一般に「モジュール間の結合度は低く、モジュール内の凝集度は高く」というガイドラインになっています。
二上さんは、「それはわかるのだが、讃岐うどんの腰の秘訣はグルテンの複合連鎖(もたれあい)にほかならない。これを使う手はないものだろうか。」と書き始めています。
そして、
if (x != b)
{
foo();
}
という書き方は、
//if (x != b)
{
foo();
}
というコメントアウトされたときに、コンパイラでエラーとならないので、
if (x != b) {
foo();
}
というコーディングスタイルを取ってもたれ合い構造を与えておくとよいといった論理展開をされています。
でも、これって、結合度を高める話ではなく、凝集度を高める話なのでソフトウェア工学と矛盾していないのではないかなと思いました。
★★★
続いて二上さんは、「ソースコードの定数値をわざとちょっとだけ変えてみて全体の出力がどう変わるか確認するテスト」に「摂動テスト」という名前を与えて提案しています。
私は、HAYST法で、ソースコードの定数ではなく外から与えられる市場条件であるノイズを大きく変えることによって「ロバストネステスト」を実施しているのですが、対称的で面白いなと思いました。つまり表にして確認すると、

となります。炊飯器のラルフチャート、

でいうと、制御因子のところをちょっとだけ変えてみて他のモジュールへの影響(結合度が低いこと)を確認しようというのが摂動テストかもしれません。
制御因子を変化させられるのは、通常は開発者だけなので、タイトルの通り、設計のデバッグ(またはテスト)で使用できるテクニックと思うのですが、おもしろいですね。
5. 細谷 泰夫さん
タイトルは、「アジャイル×テストFAQ」です。
「agile.swtest勉強会」と「JaSST Tokai 2010のSIG」であがった疑問への回答とのことです。
FAQ的なものと、細谷さん流の知見とが混ざっていて面白く読みました。
さらっと書いていてふむふむと思うのだけれど、いざ実行するとなると大変だろうなと思うのもあります。たとえば、
Q00301: 製品全体のテストに関してはいつ設計して品質を確保していくのかが疑問
A: 製品として出荷するために必要な品質確定のためのテストをどの時点で行うかについては、テスト計画の段階で決めておく必要があります。「品質確定のためのテスト」の設計は開発の初期段階から開始し、各イテレーションからのフィードバックを受けながら、どのようなテストを実施すべきかの検討を進めます。開発中盤~終盤にかけて、仕様変更がかかるリスクが少なく、テスト設計に必要なフィードバックも十分に得られている部分から順次、テスト実施可能なレベルまでテスト設計を進めます。
といったFAQは、新たに、
・ テストの計画段階で決めておくものとその粒度は?
・ 開発の初期段階から「品質確定のためのテスト」の設計をするイメージは?
・ 「各イテレーションからのフィードバック」とは何ですか?
・ 仕様変更がかかるリスクが少ないかどうかの判定手段は?
・ テスト実施可能なレベルとは?
といった質問を生じます。
ひょっとしたら、これらは、普遍的な問いであり、つまりは、スパイラルアップしていく組織のどの段階でも投げることができる質問かもしれません。
各々、現場で仮説を立てて実際のプロジェクトで検証してPDCAを回していくしかないのでしょうね。
細谷さんは何回目位のスパイラルを駆け上っている状況かなぁと思いました。
6. にし やすはるさん
タイトルは、『「わっ、私がテストのリーダーですか!?」 ~腕利きソフトウェアテストコンサルタントが支える優理の事件簿』です。
ManiaXといえば、優理のページを真っ先に開く人も多いんじゃないでしょうか。人気連載です。
今回は「萌え度>テストネタ度」です。いや、配分はよいのですが、テストネタがどうもしっくりこないのですねー私には。
★★★
たとえば、「たい焼きの頭」は同値クラスか。
私は、違うと思うんですね。
「たい焼きの頭」は、テスト対象(たい焼き)を形状の観点から分割したものであり、同値クラスではないように思います。
形の観点から見た、「たい焼き」の同値クラスは、「端の方」と「真ん中辺」、「尖ったところ」と「丸いところ」、「薄いところ」と「厚いところ」とかになるし、色の観点から見たら「薄茶部分」「茶色部分」「焦げ茶部分」とか、、、そんな感じになるのではないでしょうか。
「たい焼きの頭」はクラスではなく、何かの同値クラスのインスタンスではないでしょうか。
JSTQBの用語集で確認してみましょう。
同値クラス(equivalence class): equivalence partitionを参照のこと。
See equivalence partition.
同値分割(equivalence partition): 仕様上、コンポーネントやシステムの動作が同じと見なせる入力定義域や出力定義域の部分。
A portion of an input or output domain for which the behavior of a component or system is assumed to be the same, based on the specification.
同値分割法(equivalence partitioning): ブラックボックステスト設計技法の1つ。同値領域から代表値を実行するテストケ-スを設計する。最低1 回各同値領域を実行するように設計するのが原則。
A black box test design technique in which test cases are designed to execute representatives from equivalence partitions. In principle test cases are designed to cover each partition at least once.
ISTQBでは、「同値クラス=同値分割」です。同値分割(equivalence partition)は、同値領域とも訳されているので、「同値クラス = 同値分割 = 同値領域」です。
したがって、「同値クラス」は、「入力定義域や出力定義域の部分」となります。
「たい焼きの頭」は、「入力定義域や出力定義域の部分」でしょうか??
私はどうもしっくりこないのです。
7. 池田 暁さん
タイトルは、『「「です」・「ます」は標準語???』です。
用語の問題をさらりと取り上げた軽妙なエッセイです。
★★★
「正しい言葉遣い」や「正しい用語」は何度も炎上の燃料になってきました。
「正しい言葉遣い」の方は、たとえば、「そんなことをしていると、足元をすくわれるよ」なんていうのは「足をすくわれる」が正しいとか、「声は荒げるものではなく、荒らげるものだ」とか、、、。
それに対して「言葉は時代によって変化するものだし、何が正しい(もしくは美しい)なんて言えるのでしょうか? 通じたらよいのではないでしょうか」というもっともな意見が出て、そこで終わるのかなと思っていると同じ主張が形を変えて何人もからなされるといった炎上の仕方です。
「一所懸命」が「一生懸命」でも良くなったのは記憶に新しいところです。
私は、自分の考えや想いが一番伝わるような言葉を選べばいいんじゃないかなと思っています。
本のような比較的長生きをする文章の場合は編集者の意見にしたがって、「その出版社が採用している使い方」に準拠しますし、その場で消えていくような講演であれば勢いを重視します(はい。これも同じ主張が形を変えただけです)。
★★★
一方で、「正しい用語」の方は、一連の文脈の中で「定義」がしっかりしていることとそれが読み手あるいは聞き手と共有されることが求められるように思います。
たとえば「単体テスト」という言葉を使って2時間位議論して「話がかみ合わないなぁ」と思っていたらお互いが心の中で想定していた「単体テスト」という言葉の意味が違っていたなんてことがあります。
論文では、「未定義の言葉は使わない」というのがルールになっているようです。私はしょっちゅう古川先生から指摘されています。
また、用語の共通化は誰しもその主旨に対しては賛同するのですが、自分がこれまで慣れ親しんで使ってきた用語と違う言葉が使われるケースもあり痛みを伴うので大変です。それは、気持ち的にもそうですしこれまで作成してきた自分の膨大な資料の改定を考えるとうんざりします。
でも、どこかで譲り合いながら最もしっくりくるものを選んで定義していかないと上に書いた「単体テスト」の例のようなことになってしまうので必要なんですよねぇ。
JSTQBの用語集の改定もがんばりましょうねー。>ゆもつよさん
# タイトルの英文「"desu" and "masu" is a typcal word?」のis はare じゃなくていいのかなとちょっと気になりました。
8. TEF道(TEF北海道ソフトウェアテスト勉強会)
うえだかずきさん、おぐすさとみさん、おれしお(たかぎ)さん、きたのしろくまさん、
ペルソニスト Sさん、ねもりんさん、MAQ69さん、MUTUさん、TK.NOBIさん
タイトルは、『あの人のために作るスープカレー ~1辛 ペルソナ~』です。
JaSST '10 北海道で行われた「スープカレー表」ワークショップの舞台裏です。
ペルソナを使用した非機能要求分析の話題が中心になっています。
★★★
ペルソナは開発者が頭の中でこしらえるものではなく、ユーザ調査に基づいて作るものという点が大切ですね。また、第3章で、みんなで作成したペルソナ情報に対して、ペルソナの専門家S氏が駄目出しをしているところがとても参考になりました。
まとめ
・ 全体的にまだ冗長なので、もっと簡潔でもいいですね。
・ システムとの関わりに不要な情報は削りましょう。
・ 中山さんを一言で言うと?
・ そもそも、システムエンジニアはこのシステムの対象ユーザとしておかしいだろうが!!!
自分が、このペルソナ情報をレビューしたらS氏のようなコメントが出せたでしょうか?
たぶん、出せなかったと思います。
ペルソナは簡潔であること、システムとの関わり部分をしっかり調査に基づいて設定すること、一言で表せるようにすること(これは恐らく、ペルソナを使った要求レビューなどの時に、使うと思われます)、間違ったペルソナは全てを台無しにすること。
他にもきっとポイントはあるのだろうけど、まずは、上記4点でチェックしてみようと思いました。
9. 山崎 進さん
タイトルは、『世界一受けたくなかった授業』です。
クリステンセンのイノベーションのジレンマの話です。
★★★
バグを取り去ること、すなわち、持続的品質向上という品質戦略だけでよいのだろうか? ということがテーマです。
既存市場により良い製品を導入することだけを品質保証活動としていると、いつのまにか過剰品質ともいえる領域での競争になってしまい、新規参入者に全く異なる価値(魅力的品質)を持った新製品を出されたときに負けてしまうのではないかというわけです。
解決策として、ブルーオーシャン戦略に掲載されている4つのアクションを紹介しています。
・ 過剰品質を「とり除く」
・ 過剰品質を「減らす」
・ 新規価値を「付け加える」
・ 新規価値を「増やす」
です。
さらっと書いてあるけど難しいのは、「自分の業界で破壊的イノベーションやブルーオーシャンを生み出す可能性のある『芽』を見つける」ことです。ここを読んで「それができたら苦労はない」と思われた人も多いのではないかと思います。
★★★
私は、企業で実際にその役割を担っているおは、研究部門と思っています。
そして、テストが研究に貢献していけることは、どの研究が『芽』のある研究で、どの研究が『行き詰まり』の研究かを評価してあげることではないでしょうか。つまり『芽』のない研究を止めさせ、新しい研究に移ってもらうことです。
研究に対するテストはこれからの領域と思いますが、大切な分野になると思います。
10. TURUNE and Leaf Greenさん
タイトルは、『テスタはバグに勝つ』です。
テスト関連の替え歌というとシニカルなものが多いのですが、こちらは真面目な応援歌になっています。こういうのもよいなぁ。
11. 加瀬 正樹さん
タイトルは、『CEGTestで原因結果グラフを描いてみよう』です。
原因結果グラフのフリーツールであるCEGTestの開発者本人による解説記事です。
★★★
今回は、全体の概要と「原因結果グラフ技法のコツ」が書かれていました。
次回は、カバレッジ表の見方とかかなぁと連載を期待してみたりー。
一点気になったのは、
一般的に原因結果グラフでは、OR接合されたノードに対する詳細化を実施しても、ルール数(テスト条件数)は爆発しにくい性質があります。これは、同じ有則系組合せテストのCFD法、無則系組合せテストのHAYST法・直交表でも同じ性質があります。
という記述です。
「OR接合されたノードに対する詳細化を実施しても、ルール数(テスト条件数)は爆発しにくい」という命題は真でしょうか?
12. 鈴木&森崎さん
タイトルは、『「そんなバグ票で大丈夫か?」「一番いいのを頼む」/ バグ票ワーストプラクティス検討project』です。
鈴木さんは鈴木昭吾(@rin2_)さんです。森崎さんは森崎修司先生です。
何が良いものかを知るために、悪いものを調べてその補集合として認識するという方法があります。
このプロジェクトは「バグ票」(バグを報告するためのシート)をとっかかりにして、ワーストプラクティスを調べてみようというものです。
目の付け所が良いと思いました。
何故かというと、一番統計的に扱いやすいものをキーとしているからです。つまり、何かの観点が見つかったらすぐにそれが全体の「バグ票」のXX%だったという分析ができるからです(本稿では、まだそのような分析フェーズまでいっていませんが)。
また、「バグ票」は、テストという活動のアウトップト(成果)だからです。極端な話、もし、バグ(正確にはインシデント)が1票もでないテストがあったのなら、そのテストの必要性を見直すことが必要です。品質を計測するためのテストは別ですが欠陥を検出することが目的のテストは常に「バグ票」を意識する必要があります。
そういった意味で、開発におけるプログラミングの行数(KLOC)と同じくらい大切な指標です。
成果はこれから続々と発表されるようなので期待しています。
13. yellowheart From Minmei-Booksさん
タイトルは、『魁!手酢塗塾』です。
「兵巣兎砲入門」がでてきてびっくりするやらありがたいやらです。
シンボルキャラクターは兎だったのか。
しかし、漢字は意(思い)を込められるのでいいですね。自分なら「併主徒捕羽」かなぁ。
「主(おも:信号因子)と、徒(むだ:ノイズ)を併せて、羽(バグ)を捕える」とか。
14. 鈴木三紀夫さん
タイトルは、『意地悪漢字』です。
私は、ManiaX Vol. 4のなかで、『意地悪漢字』の話が一番好きです。
純粋に面白かったからです。
まず、意地悪漢字に至るまでのエンジニア、そしてテスト講師としての苦悩部分にとても共感できました。
「ピンポイントに狙う」と口で言うのは簡単ですが、受講者にピンポイントで狙えるようになってもらうためにはどうしたらよいかを三紀夫さんは考えます。そして、幾多の苦難を乗り越えて意地悪漢字にたどりつくのです。
三紀夫さんの講演を何度か聞いたことがあるのですが、全ての受講者に分かってもらえるような講義の仕方をしていらっしゃいます。私は、自分が言いたいことを詰め込んで、数人でもわかってもらえばいいやという気持ちでいることが多いのですが、それは決して良いことではないと分かっているので三紀夫さんの講演を聴いたり書かれたものを読むといつも反省させられます。
★★★
意地悪漢字には2つのバージョンがあります。初期バージョンの一部は、IPA/SECの『高信頼化ソフトウェアのための開発手法ガイドブック』123~124ページに掲載されている「表 6-3 テスト観点2 の例」と、「表 6-4 テスト観点2 のガイドワード」にある、「原則」「例外」「全体」「部分」等々です。
新しいバージョンは、JaSST '10北海道のLTで話された「意地悪漢字 裏表」図です。この漢字の並びはとっても深くて眺めていて飽きることがありません。隣り合った漢字には隣り合うだけの理由があるのです。
逆に言うと、2文字で意地悪漢字を表現していた時には、「既存の熟語」という縛りがあったと思うのですが、「意地悪漢字 裏表」マンダラでは、隣り合う2文字あるいは隣接する3文字あるいは4文字で新しいテスト用の熟語を作ることができるのです。
たとえば、裏の「消」の文字で言えば、既存熟語の「消滅」もありますし、隣接する「廃」「移」という漢字を使用して「廃消」(廃棄されて消えるパターン)、「移消」(移動して消えるパターン)、「移消滅」(移動して消えて滅するパターン)等々、バグに結びつきそうなピンポイントで狙うべき箇所やシーケンスが見えてきます。だから、みていて飽きないし、テストが上手くなっていくような気がしますし、実践的で役に立つものなのです。
★★★
さて、「意地悪漢字 裏表」マンダラ、いつも目に触れるところに置いておきたいですよね。システム手帳に挟んだりするとよいかもしれません。でも、電車の中でそれを開いて眺めていたらちょっと怪しい宗教っぽく見られてしまうかもしれませんね。
何か良い方法があったら教えてくださいねー。
あと、このTシャツの前後に裏表をそれぞれプリントしてJaSST実行委員が全員着てしまうなんていうのも想像しましたがどうでしょうねー。外人さんに受けそうな気がします。
15. TURUNE and Leaf Greenさん
タイトルは、『みーつけた♪』です。
今回は、ご主人様が不在のなか、てす子ちゃんが話をつなぎます。
な。なんと、今回のてす子ちゃんはSD体型&メイド服でとてもかわいいです。
新たなファンも増えたのではないでしょうか。ww
お話の方は、宝探しゲームを通してソフトウェアテストで大切なことをわかりやすく伝えています。
うん。そうそう、とうなづきながら読んでいました。
16. 安藝 優子さん
タイトルは、『はじめての学会発表を終えて』です。
安藝さんは野中先生のゼミ4年生ということです。
研究を始めたきっかけと、学会発表するまでの様子が書かれています。
目の前に来たチャンスを果敢に拾ってチャレンジしていくと成長するよねというお手本のような話です。
がんばれー。
17. 加文字 諭さん
タイトルは、『テスティング・エヴォルーション(進化革命後夜)』です。
実名で登場と、気合が入っています(PNの方の文章も好きですよ)。
これを読んで加文字さんが「テストスイートの品質」に取り組んでいらっしゃったことを思い出しました。テストスイートの品質特性を評価できるISO/IEC 9126のようなセットは何かといったテーマだったように思います。大分で開かれたJaSST九州の懇親会で「58個は多いんじゃないのー?」とか話したような記憶が、、、記憶違いかも。[m:78]
今回のJaSST '11 Tokyoの「テスト設計コンテスト」の採点基準に反映されたのかどうかは定かではありませんが、面白いテーマだと思います。
私は、品質特性の項目は、ソフトウェア開発用とテストスイート用と分ける必要はなく同じものを使うので良いのではないかと考えています。
ただし、各品質特性は対立関係を持っているものもありますから、いくつかについてはテストスイートだから重要とか、あまり重要ではないものがあると思います。
就職されてから、とてもお忙しい日々が続いているようですが、週に半日くらいはじっくりと何かのテーマについて考えてみるという時間が取れていたら良いなぁと思います。
加文字さんは、そういうことを考えていける才能を持っているわけですから……。
18. 秋山 浩一
タイトルは、『シーケンスカバリングアレイ 』です。
内容はこちらです。。
その後、居駒さん、藤倉さんの大活躍によって、順列関係のテストへの洞察が深まったことは、TEF MLを読まれた方はご存じの事と思います。
私も2,3やり残していることがあるのでそのうちにトライしたいと思っています。
19. 辰巳 敬三さん
タイトルは、『ソフトウェアテスト・ヒストリー番外編 ~ソフトウェア品質特性の歴史記述を正す~ 』です。
辰巳さんは、ソフトウェア品質関係の歴史家ですよね。
今回の品質特性の原点をたどる旅も面白かったです。
ManiaXとは離れますが、辰巳さんがTEFに紹介してくださったウェブサイトもすごいですよね。
ミッキーさんといい、辰巳さんといい本当に頭が下がります。
20. 池田 暁さん
タイトルは、『WACATE年代記(III) WACATE2008 冬 ~自分が変われば、世界が変わる~』です。
今回は、WACATE2008冬の記録でした。
サブタイトルの「自分が変われば、世界が変わる」というのは、今の自分で世界を変えようとあがき、苦しみ、引いては他人のせいにするのではなく、自分自身が古い殻を突き破り成長することによって、世界の見え方や世界との関わり方が変わるということでしょう。
WACATEのテーマ名のなかでも飛びぬけて良いなぁと思います。
★★★
このManiaXが生まれるきっかけになったのもWACATE2008だったとか。
池田さんはWACATEを生み出し拡大させ、ManiaXを生み出しと新しいものを創り出せる稀有で貴重な人です。
だから、もっと自分を大切にして医者の言うことを聞いて、健康でバリバリ活躍して欲しいですー。
21. いけどんさん、やまさき★たかしさん、コヤマンさん、カモニーさん
編集後記です。
たくさんの原稿を集めて、まとめ一冊の本にするのは大変なことだと思います。
私も、3回位原稿の差し替えをお願いしてしまったし……。
そして、それを受け入れてくださるというのは、使命感と情熱なんだと思います。
こんな素敵な本をありがとう。次もまた期待しています!
[158]社団法人日本品質管理学会 中部支部 産学連携研究会:『開発・設計における“Qの確保”』,日本規格協会,2010年.

本書は、2010年度の日経品質管理文献賞を受賞されています。
ソフトウェアの話はほとんどないのですが、ハードウェアの世界で品質をどうやって確保しているのかが初心者でもざっくりと分かります。
TQMとタグチメソッドの両方をどう取り入れていくのかについての議論もされています。
[159]福田 修 (著), 日本情報システムユーザー協会 (編集):『SEを極める 仕事に役立つ文章作成術』,日経BP社,2005年.

JUASがまとめたテクニカルライティング本です。
たとえば「ので」と「から」の違い。
(1)経験が足りないのでスケジュールが遅れます。
(2)経験が足りないからスケジュールが遅れます。
(1)の例文では、「経験が足りない」という客観的な事実認識があり、そこから「スケジュールが遅れる」という結論が導き出されています。
それに対して、(2)の例文は「スケジュールが遅れる」可能性を相手に伝えることに重点があり、その理由が「経験が足りない」と言っているのです。
比較すると、「ので」は客観的な表現であり、「から」は主幹の入った意味になります。ソフトウェア文章を書く場合には客観的であるべきですから、「ので」を使うようにしてください。
こういった情報をまとめて読めるという点が良いです。仕様書のレビューにも役に立つと思います。
[160]椿正明:『名人椿正明が教えるデータモデリングの"技"』,翔泳社,2005年.

エンプラ系の企業のお手伝いをしていると、入力だけではなくデータとの組み合わせを考えないとテスト設計ができないことが分かりました。
ここでいっているデータはいわゆるマスターファイルに格納されている、たとえば顧客台帳などのことを言っています。入力はそれを引き出すためのトリガーにすぎません。
エンプラ系でいまひとつ直交表などの組合せ技法が使われないのは、データ同士の組合せをテスト設計しないとだめなのかもしれないと思い、データモデリングの本を読み始めました。この本を読んだ動機です。
で、まぁ、結論から言うとこの本の通りに作れば組合せの問題なんて起こらないだろうなと。
それは、この本に限らずT字でもそう感じました。
というのは、この本で書かれている通り、プロセスを固める前にインターフェイスを固定すればプロセス間の問題はなくなりまし、リソースとイベントを分離してイベントを考える前にリソースをきちんと設計すればイベントの干渉問題も防げます。
業務を考える前にデータを設計することで新しい業務に対するデータの独立性は保て、同じ記法を使って設計することでコミュニケーションの問題から来る組合せ問題も無くなるからです。
引き続き、きれいなエンプラの世界を別の本で読んでみたいと思います。いいものをたくさん見ることで失敗作を見たときの違和感を感じられるようになると思うから。
[161]中谷 彰宏:『あなたに起こることはすべて正しい』,ダイヤモンド社,1996年.

思考を前向きにするための金言集です。私が気に入ったものは次のもの。
チャンスがコーヒーなら、
人はカップ。
コーヒーを冷まさないようにするには、
まずカップを暖めておくこと。
厳しい人は愛される。
厳しく、厳しく、厳しく。
そして最後に、
許す人が、愛される。
ドレッシングだって、
混ざりあうためには、
隙間が必要だ。
選択とは、
最初に選ぶことではなく、
今歩いている道を
変更する時に使うもの。
「助けて下さい」なんて言っても、
殺されるだけだ。
ギャング映画を
見たことがないのかい?
睡眠時間の短さを
自慢してはいけない。
要は起きている時間に
何をしたかだ。
アメリカの刑務所に行くと、
前科何犯というやつが、将来の夢を語るんだ。
私たちは、夢から降りるのが
早すぎるんじゃないか。
親友に
裏切られたのではなく
裏切られることで
親友を救ったのだ。
人生の転機になるキッカケは、
すべてばかげた行動である。
□□をして、お金をもらうなんて、
申し訳ない──、
そんな仕事を探そう。
ブルック・シールズが来日した時に言った。
「写真を撮らせてくれと
さんざん言われたけど、
一緒に遊ぼうと誰も誘ってくれなかった。
安全な生き方が、
一番危ない。
じっとしているのが、
夢から一番遠ざかっている。
1億円を損できる人は、
1億円を稼ぐことができる。
ここ一番で、神様のサインを見よう。
神様のサインはいつもこうだ。
「行け」
けど、どれもちょっとバブリーかも。w
これで、「本棚3」はいっぱいになりました。「本棚4」へ続きます。